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それから扉間様は毎日、夕方になると図書館にお見えになった。
最初は緊張していた私も、扉間様が堅苦しいイメージとは裏腹に好意的に接して下さったおかげで緊張も解け、たわいのない話をするようになった。
扉間様、という呼び方は、いつの間にか、扉間さん、という呼び方に変わった。
私たちはいろんなことを話した。
扉間さんが魚を好んで食べること。
私が毎週月曜日に出る漫画を楽しみにしていること。
扉間さんの愛刀のこと。
火影様がペットを飼いたいと扉間さんに頼み込んでいらっしゃること。
ある日は、図書館の催し物として子供たちへの絵本の読み聞かせを、扉間さんが遠くから眺めていらしたことに気付いて、急に本を読む声がしどろもどろになったり。
ある日は、階段から転げ落ちそうになった時にがっしりした腕で支えていただいたり。
またある日は、私が忍びを過去に目指したこと、でもその夢を諦めざるを得なかったことも話した。
｢私には才能がありませんでした。忍術が全く使えなかったのです。それを補えるほど、体術も得意ではありませんでした。体力もなくて、努力するのが辛くて、怖くて。周りからもバカにされて。逃げてしまったんです｣
言ってしまってから、はっと我に返る。
なんて重たい話をしてしまったのだろう、と恐る恐る扉間さんの顔色を伺うと、その顔は真剣で。
真っ直ぐ私を見つめる瞳に、また胸がとくんと鳴る。
｢もしワシがAの師なら、夢を諦めさせるようなことはしなかったのに｣
｢良いんです。私はこの仕事に誇りを持っていますし、この仕事をやっていなければ、扉間さんともこうしてお話し出来ませんでしたからね｣
にっ、と笑いかける。
半分、自分に言い聞かせながら。
忍びになりたかったけれど、この仕事も好きだから。
扉間様は机の上に開いたまま置いていた本を閉じると、ぽん、と私の頭に手を置いた。
そのまま、彼の大きな手が私の頭を、よしよしと撫でる。
胸の内に暖かい気持ちが湧き上がって、私はまたにっこり笑う。
頬が、熱い。
ドキドキして、嬉しくて、ほっとして。
｢ワシに何が出来ることがあれば、いつでも申せ｣
大きく頷くと、扉間さんはふっと笑う。
本を返却して、その大きな背中に続いて階段を下りる。
｢また明日来る｣
｢はい、お待ちしております｣
帰っていく彼の背中を見つめていると、胸がきゅっと締めつけられる。
早く、明日にならないかな。
ーーー
完成したツバメの巣に、卵が3つ産み付けられた。
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K(プロフ) - あとがきを読んで泣いてしまいました...貴方様のお陰で、なんだか少し救われたような気持ちになりました。重たい感情で申し訳ないです...この作品を書いてくださってありがとうございます！！ (2021年3月30日 1時) (
レス) id: 29a0737890 (このIDを非表示/違反報告)
maho(プロフ) - 本当に素敵なお話でした！とても面白かったです！ (2020年8月5日 14時) (レス) id: ad2d13c9c0 (このIDを非表示/違反報告)
夜神 零彼 - もうなんか凄いですね！ 感動しました！最後のしまりが良かったです！ (2020年4月3日 17時) (レス) id: 84e498c4cd (このIDを非表示/違反報告)
如月 - おぉ！ありがとうございます！(*´∀｀*) (2019年1月18日 22時) (レス) id: 699e158105 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 如月さん» ありがとうございます！なるほど、何か短いものを、思いついたら書いてみますね〜！ (2019年1月5日 22時) (レス) id: a22cf2b507 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：東雲 x他1人 | 作成日時：2018年5月14日 8時
