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二十九 ページ31

足の裏と手のひらにチャクラをこめて、一歩、また一歩と崖を降りていく。
忍びにしてはかなり遅いかもしれないけれど、確実に降りなければ、落下して死んでしまう。
全体重を支えている手足は、刻一刻と痛みを増していく。
筋肉が、悲鳴をあげる。
それでも、私は集中し続けなければならなかった。
私たちを命懸けで助けに来てくださった扉間さん達のためにも、私はなんとしてでも生きて帰らなければならなかった。

太陽が、容赦なく照りつける。
汗が、全身から噴き出した。
そんなことも構わず、ゆっくり降り続ける。
そろそろと足の下に視線をやると、地面が見え始めていた。
私は、足が地面につくまで、もう足の下は見ないことにした。
気が抜けてしまっては大変だからだ。

骨が、筋肉が、痛む。
チャクラ量の圧倒的に少ない私は、既にチャクラ切れを起こしそうになっていた。
まずいことになった。
敵を倒した忍びの皆さんが私に気づいてくれない限り、救出は望めない。
その先に待っているものは…

考えるのは、やめにした。
足元を見て、リスクを考えて足を止めるのは、もう嫌だ。
今は、自分の体力とチャクラを限界まで使って、ゆっくり確実に降りていくだけである。

ーーー

どのくらいの時間が経っただろうか。
既に思考は停止し、痛みの感覚はほとんど麻痺しながらも、ただひたすら崖を降りていた、その時だった。

「A!」
「Aさん!」

呼ばれて、ふと我に返る。
ああ、待ってくれている人がいる。
そしてその声のうちの1人は、私の愛する人。

「A、そこから飛び降りろ!オレが受け止める!」

振り返ると、まだかなり高さはあるのだが、下の方で扉間さんが此方を見ているのが見えた。
自分で治しきれなかったのか、無数の傷が見える。
その周囲で、他の忍びの皆さんや、保護された囮の方々がこちらを見上げている。

私は一瞬だけ躊躇って、崖にぐっと体を添わせると、両手足で崖を蹴飛ばした。
私の身体が、宙を舞う。
そのまま、私は目を閉じた。
あとは、全て扉間さんに委ねよう。

身体が地面に近づいて、ぎゅっと包み込まれた。
目を開けると、扉間さんが嬉しそうに私の顔を見つめていた。

「よかった。無事で。よくやったぞ」

その声は、子守唄のように、私を包み込んで。
そのまま、眠りに落ちてしまった。


ーーー

バサ、と巣からツバメが一羽飛び立った。
あれは、あの時助けた雛であろうか。

マダラは微笑みながらその姿を眺めていた。

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設定タグ:NARUTO , 千手扉間   
作品ジャンル:恋愛
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K(プロフ) - あとがきを読んで泣いてしまいました...貴方様のお陰で、なんだか少し救われたような気持ちになりました。重たい感情で申し訳ないです...この作品を書いてくださってありがとうございます!! (2021年3月30日 1時) (レス) id: 29a0737890 (このIDを非表示/違反報告)
maho(プロフ) - 本当に素敵なお話でした!とても面白かったです! (2020年8月5日 14時) (レス) id: ad2d13c9c0 (このIDを非表示/違反報告)
夜神 零彼 - もうなんか凄いですね! 感動しました!最後のしまりが良かったです! (2020年4月3日 17時) (レス) id: 84e498c4cd (このIDを非表示/違反報告)
如月 - おぉ!ありがとうございます!(*´∀`*) (2019年1月18日 22時) (レス) id: 699e158105 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 如月さん» ありがとうございます!なるほど、何か短いものを、思いついたら書いてみますね〜! (2019年1月5日 22時) (レス) id: a22cf2b507 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:東雲 x他1人 | 作成日時:2018年5月14日 8時

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