二十七 ページ29
扉間さんは私の手を引いて立たせると、まっすぐ私の目を見つめた。
「すぐに戻る。Aはここで待っていろ」
こくん、と私が頷いたのを確認して、彼の姿は一瞬で掻き消えた。
これが、飛雷神の術なのだろう。
私は安堵しきって視線を敵のもとへと投げかけ、そして言葉を失った。
扉間さんの分身が全て消えており、本体と思しき扉間さんが敵に囲まれていた。
「特殊な土…地の利を得たな…！」
「フン…ここの土は我々にチャクラを与え、いくらでも回復させてくれる特別な術式が組み込まれている」
敵の1人が鼻でせせら笑う。
「流石の千手扉間と言えども、これではオレ達に勝ち目はないな」
「だからここに洞窟を作ったというわけか。…くそ、」
焦ったように小さく舌打ちをした扉間さんから、目が離せない。
きっと今の私は、心配と恐怖の入り交じった、酷い顔をしているんだろうな。
「扉間様、」
倒れていた木の葉の上忍が起き上がりながらそう呼ぶと、扉間さんはさっと後方へ下がった。
「ここから別の場所へ移動するしかありません」
「しかし…先程の子供や老人達は？」
「無事に麓まで着いたようです」
上忍のうちの1人が、白眼を発動させながら答えた。
どうやら、ここで問題になるのは私のようだ。
扉間さんは私を心配そうに見つめる。
「奴らが回復できる以上、オレもあまり影分身を多用してチャクラを浪費する訳にもいかん。他の者も、チャクラをかなり削られたようだ」
「はい。…1人で、逃げます」
言葉の重みを噛み締めながら、ゆっくりと答えた。
扉間さんの口元が、悔しそうに歪む。
「すまない」
「大丈夫です。それに私は、…マダラ様に修行をみていただいていましたから」
まだまだ戦の多い世の中の、こんな時のために。
マダラ師匠と過ごした日々の成果を。
私を見つめる扉間さんの目が、少し見開かれて、そして細められた。
「…そうか」
扉間さんは前方の敵を見据えると、ブォン、と雷神の剣を取り出した。
「A、また後でな。…行け！」
扉間さんの声とともに、私はまだ痛む足を無理やり動かして、岩肌を下っていった。
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K(プロフ) - あとがきを読んで泣いてしまいました...貴方様のお陰で、なんだか少し救われたような気持ちになりました。重たい感情で申し訳ないです...この作品を書いてくださってありがとうございます！！ (2021年3月30日 1時) (
レス) id: 29a0737890 (このIDを非表示/違反報告)
maho(プロフ) - 本当に素敵なお話でした！とても面白かったです！ (2020年8月5日 14時) (レス) id: ad2d13c9c0 (このIDを非表示/違反報告)
夜神 零彼 - もうなんか凄いですね！ 感動しました！最後のしまりが良かったです！ (2020年4月3日 17時) (レス) id: 84e498c4cd (このIDを非表示/違反報告)
如月 - おぉ！ありがとうございます！(*´∀｀*) (2019年1月18日 22時) (レス) id: 699e158105 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 如月さん» ありがとうございます！なるほど、何か短いものを、思いついたら書いてみますね〜！ (2019年1月5日 22時) (レス) id: a22cf2b507 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：東雲 x他1人 | 作成日時：2018年5月14日 8時
