拾八 ページ20
空はすっかり明るくなって、木の葉の里はすでに賑わい始めている。
小夏は制服に着替え終わると、ロッカーを閉めようとして、そのまま手を止めた。
その手は、ゆっくりとカバンの中へ伸びて、取り出したのは、スマートフォン。
出勤前に見たLIMEを、もう一度確認した。
昨日彼に送ったLIMEの返事は、やはりまだない。
何かあったのかな。
寝落ちしちゃって、慌てて用意しているのかな。
だったらLIME返す余裕なんかないよね。
…でも、そうじゃなかったとしたら？
疲れてるのかな。
でも、ちょっとした合間に何かひとことでも返してくれればいいのに。
ちょっとだけむっとした表情でロッカーを閉めた小夏に、静香が笑いかける。
「おはよう、小夏。どうしたの」
「うう…静香先輩〜」
小夏はわざとらしく寂しがって見せて、冗談めかしながら少しだけ静香に彼氏の愚痴を言う。
静香はそんな小夏をなだめながら、二人でミーティングの場所まで歩いて行った。
「では、ミーティングを開始します」
皆がぞろぞろと集まってきて、ミーティングが始まる。
そこに、Aの姿はない。
小夏と静香は顔を見合わせた。
「Aがまだ来ていないんですが」
「そうですね。今のところ特に連絡もないですし。珍しいですね」
「私、電話してみます」
「よろしくお願いしますね」
小夏は館長の目を見てうなずくと、急いでロッカーに戻った。
スマートフォンを取り出してAの連絡先をタップ。
しかし、何度呼び出してもAは電話に出ない。
「静香先輩、」
走って戻ってきた小夏の目に入ったのは、静香と話す扉間の姿。
もし、Aに何かあったら。
「A、電話にも出ません。いつもは真っ先にきて忍術書とか小説とか読み漁ってるのに」
「嘘…どうしたんだろう。体調崩して動けないとか？」
静香の表情が複雑にゆがむ。
それを聞いた扉間は、眉をしかめた。
「そういえば、最近岩が暮れの忍びが里の近辺を偵察していたと聞く。何かあっては大変だ。誰か、Aの家を知る者は？」
静香と小夏が、はい、と返事する。
「よし、行くぞ」
小夏はじっと静香の顔色を窺ってから、口を開いた。
「私はここに残ります。司書を二人も減らすわけにはいきませんし。静香先輩、扉間様、Aのことを頼みます」
深々と頭を下げた小夏を映した静香の瞳が、また揺らいだ。
「任せておけ。行くぞ」
足早に図書館を出ようとする扉間の背を追って、静香も出口へと走っていった。
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K(プロフ) - あとがきを読んで泣いてしまいました...貴方様のお陰で、なんだか少し救われたような気持ちになりました。重たい感情で申し訳ないです...この作品を書いてくださってありがとうございます！！ (2021年3月30日 1時) (
レス) id: 29a0737890 (このIDを非表示/違反報告)
maho(プロフ) - 本当に素敵なお話でした！とても面白かったです！ (2020年8月5日 14時) (レス) id: ad2d13c9c0 (このIDを非表示/違反報告)
夜神 零彼 - もうなんか凄いですね！ 感動しました！最後のしまりが良かったです！ (2020年4月3日 17時) (レス) id: 84e498c4cd (このIDを非表示/違反報告)
如月 - おぉ！ありがとうございます！(*´∀｀*) (2019年1月18日 22時) (レス) id: 699e158105 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 如月さん» ありがとうございます！なるほど、何か短いものを、思いついたら書いてみますね〜！ (2019年1月5日 22時) (レス) id: a22cf2b507 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：東雲 x他1人 | 作成日時：2018年5月14日 8時
