検索窓
今日:24 hit、昨日:31 hit、合計:65,817 hit

#170 ページ23

「……俺はAのことが大好きだ、Aの奏でる音楽も、俺と一緒に名曲を生み出してくれる才能も、優しくて温かいところも、全部、全部……」

そう言いながら、私をぎゅっと抱きしめるレオくん

そう吐いた声も、その手も微かに震えていて、彼の精神はすり減り、かなり追い込まれているのだろう

「(争いが苦手な無邪気な彼が、今は他のユニットを内部して回ってる……)」

表向きはKnightsのリーダーたる彼の指示
本心ではどう思っていようとも、Knights存続のためにはやらざるを得ない状況なのだ

「……ごめん、俺はAのことを笑顔にしたいのに、今すごく困らせてる……でもどんな傑作を作っても、勝てない……俺の中の最高のメロディが罵倒と呪いの言葉で掻き消される、歪んでく…」

彼は自他ともに認める正真正銘本物の天才だ

世界に誇れる未来に残せる無数の傑作を自在に生み出せる、そんな曲を作ることができる人

「(才能のある者であればあるほど理解されないことは苦しくて、死んだようなもの……)」

かつて私にも彼と同じような経験がある
だから彼の苦悩は痛いほど理解出来てしまうのだ

「……ッ」

彼の私を抱きしめる力は段々と強くなる
まるで縋りつく相手を求めているかのように、溢れてしまった彼の本心は止まらない

「(レオくんの気持ちはわかる,とてもわかるのに……今の私はなんて声をかけていいのか分からない……)」

彼の苦悩を心の内を理解できるはずなのに
壊れかけていく彼になんて声をかけていいのか分からない

何も出来ない自分が無力で歯痒くて,苦しくなる


「レオさん、そんなに力を込めたらAさんが苦しそうだぞぉ」

「ッ!!ごめんッ、俺ッ俺……」

斑くんに指摘され、ハッとしたようにすぐに手を離すレオくん

「ッ…」

彼はまるで悪いことをした子供のように
怒られることに怯えているかのように、目を潤ませて、こちらの様子を伺っている

「レオさん、大丈夫だ。
Aさんは何も怒ってないぞ」

戸惑っている間に彼はすかさずそう言った
さすがは親友と言うべきか、斑くんのフォローは素早い

「ほんとか?ほんと???
俺のこと、嫌いになったりしてないか??」

「そんなこと絶対ないわ、
私もレオくんのこと大好きだもの」

私がそういうと彼は心底安堵したように微笑んだ
その笑顔はあどけない私のよく知る彼の笑顔だった

「……KnightsもAも俺が守るから……」

私は知らなかった
この時、彼はもう既に限界を迎えていたことを

#171→←#169



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (236 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1734人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

みるくてぃー - すごく面白いです!更新頑張って下さい! (8月19日 8時) (レス) id: f530bd8429 (このIDを非表示/違反報告)
姫林檎(プロフ) - 星空ブリキさん» ありがとうございます!!!存分に泣いてください笑 (2023年4月15日 17時) (レス) id: bf03de0130 (このIDを非表示/違反報告)
星空ブリキ(プロフ) - 泣きますよ!? 泣きますからね!? 責任とってくださいね゛(褒め言葉)!? だってめっちゃ面白い内容なんですもん(わがまま)!!!! (2023年4月13日 11時) (レス) id: 2cdbc326e2 (このIDを非表示/違反報告)
姫林檎(プロフ) - きさらぎさん» ありがとうございます!!長らくおまたせしました!!!続きを楽しんで貰えたら嬉しいです (2023年4月4日 22時) (レス) id: de049ad89d (このIDを非表示/違反報告)
きさらぎ(プロフ) - もう何周目か分からないくらい繰り返し読んでます!英智先輩の執着している感じがもう沼です!更新頑張ってください!! (2023年3月28日 20時) (レス) @page15 id: 3316933a16 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:姫林檎 | 作成日時:2023年1月2日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。