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「それで、Aさんはどうして泣いていたんだ?
ママに教えて欲しい、優しい君を泣かせたのは一体どこのどいつかな」
「ッそれは……」
突然、核心に迫まられ私は口ごもる
「俺は無理強いはしない、Aさんが話したくないなら話さなくてもかまわないぞぉ」
そう言いながらまっすぐ私を見つめる斑くん
彼はこちらの事情を大方、察しているのだろう。
けど私から話すのを待っているのだ
「でも、これだけは覚えていて欲しい
Aさんがどんな状況にいようと俺は君の味方だ」
背の高い彼は少し屈んで、私と視線を合わせる
そして、そう優しげに微笑みながらそう言いきった
「今、この場で聞いた話は俺の中で留めておく
俺は、少しでも吐き出して楽になるならいいと思ってるぞぉ」
その優しい笑顔に、優しい言葉に私の心は決まった
そして戸惑いながら、震えながら私は口を開いたのだった
「…わたし……わたし……ね」
「ゆっくりでいいぞぉ、ママはいくらでも付き合うからなぁ」
私は先程の出来事を全て彼に打ち明けた
今のこの夢ノ咲学院の状況を、芸能界での悪評を知っていながら、プロデューサーとして本来望むべき、アイドル業界の未来を望めないこと
そして1人のアイドルを私情で殺してしまったことを
「(何を言われても私は軽んじて受け入れられる)」
それだけの事を私はした
どんな罵詈雑言の嵐だって受け入れる
「うーん、これはあくまで俺の意見だが,俺はAさんが間違っている、悪いとは思えないなぁ」
「え……」
帰ってきたのは、想像もしなかった私へ肯定する言葉
ひとりのアイドルを殺した私へ掛けられるとは思っていなかった一言だ
「……Aさんはレオさんと同じで優しすぎるんだなぁ
頭では理解しても、口では否定する言葉や罵倒しても、心の内では相手に善性が残ってることを期待してる」
「…………っ……」
彼の一言におもわず私は固まる
それは返す言葉が見つからないくらいに図星だ
私は心のどこかで、この非道な行為をやめてくれることを、彼に善意が残っていることを期待している
「でも俺から言わせれば、そんなの気にするだけ無駄だぞぉ
そいつはAさんを長年の苦痛から救ってくれたか?傍にいるだけで安らげる相手か?君の理解者になってくれたか?」
「…ッ」
「そいつはAさんに何かを与えられた人間で、Aさんが何かを与えて貰った存在じゃない
そんなことは、天秤にかける前からわかりきってるぞぉ」
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みるくてぃー - すごく面白いです!更新頑張って下さい! (8月19日 8時) (レス) id: f530bd8429 (このIDを非表示/違反報告)
姫林檎(プロフ) - 星空ブリキさん» ありがとうございます!!!存分に泣いてください笑 (2023年4月15日 17時) (レス) id: bf03de0130 (このIDを非表示/違反報告)
星空ブリキ(プロフ) - 泣きますよ!? 泣きますからね!? 責任とってくださいね゛(褒め言葉)!? だってめっちゃ面白い内容なんですもん(わがまま)!!!! (2023年4月13日 11時) (レス) id: 2cdbc326e2 (このIDを非表示/違反報告)
姫林檎(プロフ) - きさらぎさん» ありがとうございます!!長らくおまたせしました!!!続きを楽しんで貰えたら嬉しいです (2023年4月4日 22時) (レス) id: de049ad89d (このIDを非表示/違反報告)
きさらぎ(プロフ) - もう何周目か分からないくらい繰り返し読んでます!英智先輩の執着している感じがもう沼です!更新頑張ってください!! (2023年3月28日 20時) (レス) @page15 id: 3316933a16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:姫林檎 | 作成日時:2023年1月2日 14時