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昨日の事のように思い出せる。
苦痛を滲ませたような叫び声がして、本を読んでいた顔を上げる。その時に察してまた本に目を戻せば良かったのに、愚かな私は声のする方へと歩いていってしまった。
ペタリ、ペタリと、自分の足音だけが響く。灯りのない廊下は、窓から差し込む紅い月の光だけが頼りで。
辿り着いた先、半開きの扉から、そっと中を覗き込んだ。
――初めに見えたのは、血。傷口からドクドクと流れ出る、血液。
次に見えたのは、痛みに悶えるニンゲンの、真っ白な顔。
最後に、目が爛々と輝き、口元を紅く染めた兄弟。普段は白いその牙が、紅く、紅く染まっていて、私は思わずヒッと悲鳴をあげた。
ゆっくりと、兄弟の顔がこちらを振り向く。手で血を拭いながらにこやかに話しかけてくる兄弟は、怯えたような顔をした私を見て不思議そうにする。
叫び声が怖かったのか？ ――違う。
暗いのが怖かったのか？ ――違う。
そうして幾つか質問を投げかけた兄弟は、ふと、まさかな、みたいな顔をしながら私に問いかけた。
――もしかしてお前、血が怖いのか。
.執筆状態：連載中
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CSS .昨日の事のように思い出せる。
苦痛を滲ませたような叫び声がして、本を読んでいた顔を上げる。その時に察してまた本に目を戻せば良かったのに、愚かな私は声のする方へと歩いていってしまった。
ペタリ、ペタリと、自分の足音だけが響く。灯りのない廊下は、窓から差し込む紅い月の光だけが頼りで。
辿り着いた先、半開きの扉から、そっと中を覗き込んだ。
――初めに見えたのは、血。傷口からドクドクと流れ出る、血液。
次に見えたのは、痛みに悶えるニンゲンの、真っ白な顔。
最後に、目が爛々と輝き、口元を紅く染めた兄弟。普段は白いその牙が、紅く、紅く染まっていて、私は思わずヒッと悲鳴をあげた。
ゆっくりと、兄弟の顔がこちらを振り向く。手で血を拭いながらにこやかに話しかけてくる兄弟は、怯えたような顔をした私を見て不思議そうにする。
叫び声が怖かったのか？ ――違う。
暗いのが怖かったのか？ ――違う。
そうして幾つか質問を投げかけた兄弟は、ふと、まさかな、みたいな顔をしながら私に問いかけた。
――もしかしてお前、血が怖いのか。
.執筆状態：連載中
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作者名：望月 | 作成日時：2022年8月15日 20時
