22話 ページ24
「……まだいたんだ」
起き上がり、煙草を吸っていたジンに言う。それに返事はない。
何もいわず唇を寄せると、呆れたように溜息を吐いて煙草を離してキスをする。
独特な苦味に眠気が消えて、意識がちゃんと覚醒していく。
すると、後頭部に手が回り頭が固定される。
こいつにしては珍しい、と思いしばらくお互い、唇が痛くなるまでキスをした。
「はぁ。……舌とれるかと思った」
「別に、閻魔に変わって取ってやってもいいがな」
開いた唇から舌を引っ張り、なんてことを言う。
わりと真剣な顔つきをして言うので、絶対やめろよと釘を刺しておく。
それから再び煙草を咥え、ハンガーに掛けていたコートを羽織る。
ヘアゴムを解いてハットを被ればもう、いつもの格好をしたジンがいた。
目深くハットを被り、こちらに背を向けて言う。
「金はそこに置いておく。ホテル代でもあるが、被害総額の一部として受け取っとけ」
枕元にある札束を見下ろし、はーいと返事をする。
正直ホテルがこんなにかかるわけじゃないし、絶対多くは後者だろう。わかりづらい。
「またね〜」
「おまえがまだ生きてたらな……」
クールな言葉を言い捨てて、部屋から出ていく。重く響いた開閉音に瞼を閉じた。
「――」
つくづく、あいつと似ている。
それとも本当は全然似てなくて、未だあいつを待っている俺がそう思い込んでいるだけか。
ベッドから降りて、窓際に立つ。窓を開けると外の世界を改めて見渡した。
今は正午過ぎ、正確な体内時計が小腹を通じて情けない音を鳴らす。
キスマークだらけの腹を見下ろして、やはり褪めた目が近くに店はないかと探す。
「そういえば、コナンと会った近く……カフェがあったような気が……」
よく車で移動する際目にしていた店。
なかなか行けなくて、拗ねてた覚えがある。
しわくちゃになったシャツを着て、ジンの置いていったお金を持ち部屋を出る。
「場所はわかるけど名前がなぁ。名前、名前……場所検索したらわかるかな?」
ポケットからスマホを取り、その店の名前を検索する。
「あいつらも呼ぶか。……あー、いや。たまには一人で過ごしてぇ」
連絡しようとした指を止め、調べることに専念する。正直四六時中一緒にいると気が休まらない。
特定できている場所を検索していくと、やっと店の名前が出た。
受付の男に金を払い、さっさとタクシーに乗って出て行く。運転手に店の名を伝えた。
「えーっとね、場所は毛利探偵事務所の一階で――喫茶ポアロまで」
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