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09話 ページ11

「――あいつ、殺してやる」

「こら」

ベッドの傍らに立ち、閉まった扉を睨み付ける。その鋭い殺気に思わず苦笑した。

「ひーな。ちょっと屈んで」

自分よりも大きい男に手を伸ばして、言う。目を丸くし、言うとおり下げた頭を撫でてやる。

指先から伝わるぬくもりに目を細め、落ち着きを取り戻す。掌に頭を擦り付け、もうねだってきた。

そして、窓際に立って下を見下ろすかなを見る。視線の先には秀一がいるのだろう。

「別に男と遊ぶのは今さら構いませんが、警察はできるだけ控えてください」

「なんで?」

「天敵だから、です」

「あー、でもコーフンするし」

頬を硬くし、顔が強張る。何か言いたいことがあるときの表情だ。

表情があまり変わらないことでこの世界で生きていられているといっても、こいつは過言じゃない。

だけど、一緒にいる時間が長かった。
少しの変化も目を瞑らない、逃してやらない。

「なに、どうした?」

口許に笑みを飾り付け、優しい声音を喉から発する。

それにいえ、と首を横に振る。が、睨めつくよくな視線に結局は折れ、言った。

「……あなたがいつも当然のことを聞くのは、真意を悟られたくないときだと……俺は思ってるんで」

実弟の、思わぬ指摘。

自分でさえも気がつかなかったその悪癖に、掠れたような吐息しかこぼれなかった。

でも、努めて平静を保つ。保って、心を強くして、昨夜の熱を忘れる。

「そっか」

「……あの、すみません」

「ん、何が?なんか悪いコトしたの?」

「いやだって……怒ってる……」

「………………怒ってねーよ?」

「や、怒ってますよね?いいんで。俺、今回ばかりは悪いって自覚してますから」

しつこく怒ってないと意地を張り、慌てふためくかなを肴にする。

感情表現が乏しいかなが唯一感情を示すのは、俺と接するときか。

それでも、こうして感情を全面に出すのはあまりない。

気まずげに顔を背け、垂れる冷や汗を袖で拭う。かわいい。と、真顔で思う俺ってば○○○○かも。

「Aさん、俺にもかまってください」

甘い声で囁き、覆い被さるように抱き締める。まるで大きな子供だ。

とはいえ、一晩隣の部屋に放置していた。
甘えるのは仕方ない。俺も甘やかしたい。

「わかったよ。……かな」

「……はい」

優しく微笑んで手招きすると、特に反抗もせずベッドに上がる。

二人の熱い眼差しを受け、よしよしと頭を撫でる。




「甘えていいぞ。…………おいで」

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作者名:暁の雨 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2019年4月20日 20時

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