三十一話 ページ32
時刻は五時。空は橙色に染まっていた。教室には私たちしか残っていない。
「凄いね。どの教科も点数が上がったし、教えがいが有るよ」
「太宰君、ほんとありがとうね。それで、ご褒美は何にするか決めたの?」
「決めたよ。____Aちゃんからハグしてよ」
「は、ハグ………?」
そ、ハグ。太宰君が頷く。
「あ、抱っこでもいいよ」
「出来るかっ!」
私みたいな平均女子高生が、180センチ越えのほぼ成人男性を抱きかかえられるわけないだろ!
私をゴリラか霊長類最強のあの人と勘違いしているのか、太宰君は「えー、残念」と肩をすくめた。
「ほら、は〜や〜く〜」
「チェンジ!チェンジ!」
「ふーん、そんなに抵抗するなら____、もっとイケナイことしちゃうけど?」
ゾワゾワと鳥肌が立つ。寒気で歯が震えた。ほんと、太宰君が云うと冗談にならない。
「わ、わかったから!」
太宰君はいつでも来たまえ、と両腕を広げる。表情がもう楽しんでいる。
「まだ〜?」
「ゔっ」
「早く〜」
「わかってるよ!」
頬を緩めてニヤつく太宰君に、タックルをするように飛びついた。その姿はさながら猪のようだったと思う。
よろめくかな、と思っていたが、思いのほか太宰君は身体が頑丈らしく、まったく動じなかった。
「そんなに勢いつけちゃって、私とハグしたかったの?」
「違うから………」
「Aちゃん照れちゃって。可愛いね」
悔しくて暴れたかったが、太宰君の腕が背中に回ってきて阻止された。
「こう見ると小さいねぇ」
「太宰君からしたらみんなそうでしょ」
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嘘だろお前まさか - マヂこの小説好きです…これは切実に夢主チャンと中也結ばれて欲しいけど、太宰サンの小説(メタ)だし太宰サンの気持ちも報われるといいね…考えれば考えるほど難しいン…もう会話の一つ一つがえもいというかなんというか!!!! (2月20日 22時) (レス) @page31 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
Kakinotane - 好… 最高か!?太宰さんかわよいし、中原さんも主ちゃんを支えてくれてるの良いなぁ (2月10日 17時) (レス) id: 495f3defd1 (このIDを非表示/違反報告)
あっぴー - くぅぅぅふつうに尊い… (2月10日 14時) (レス) @page28 id: 9335c42a96 (このIDを非表示/違反報告)
橘たまき(プロフ) - 感想さん» コメントありがとうございます!頑張ります! (2月4日 18時) (レス) id: e2eb5250a2 (このIDを非表示/違反報告)
感想 - なんだかんだ一番面白い好きお話の続き応援してるので完結してください! (2月4日 18時) (レス) id: 37e340b4fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:橘たまき | 作成日時:2023年12月5日 15時