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シャチは探偵社を所望する3 ページ32

なぜ、どうして。
口調か? いや、私は常に織田作であれるように気をつけて話している。
挙措に関しても同様。私自身、元々女性らしさが欠けていた為、男として振舞うことに違和感はなかった。
慌てるな。落ち着け。私は織田作なのだから、何も慌てることはない。事実を述べればいいのだ。
「いや、一度もないな」
「そお?」
「どうしてそう思ったんだ?」
「僕が色々喋ってる時、君は『大変だったな』『それは凄い』とは言ったけれど、助言をしようとは一度もしなかった」
「そうだっただろうか」
「他人が零した愚痴に対して女性は共感し、男性は解決したがる。君の言動はまさしく女性的だと思ったんだけど。まあ男性にも共感を重視する人もいるし、一概には言えないね」
うんうん、と頷く名探偵に私は少しほっとする。確信があって言ったわけではないらしい。良かった。私は織田作であらねばならないのだ。
無論、女であるなんぞ以ての外だ。
「……そう、それだよそれ!」
ビシッと私を指差す乱歩さんに、私はびっくりする。なんなんだ。
「僕が追求をやめると、どうして君は安心するんだ。何か後ろめたい事があるのか?」
どきり。
ずいっと下から顔を近づけてくる乱歩さんに、私は後退りする。
「『女性だった事があるか』なんて突拍子も無い質問、心当たりが微塵もなければ動揺もしないよ! 尋ねた時僅かに顔が強張ったのは、知られたくないことを知られてしまうかもしれないと警戒したから。でも、流石の僕にも君が“女性である”事を警戒する理由がわからない。そもそも君はどこからどうみても男性だし、過去に性転換の経験があるのならば話は別だけど見た感じそういう類の手術は受けてなさそうだ。なのにどうして僕の質問を警戒したの?」

ああ、本当に乱歩さんが異能力者じゃなくて良かった。
証拠がなくては暴けない、普通の人間で良かった。私は内心でほくそ笑んだ。

「……初対面の人と話す時は、訳もなく緊張するんだ」
だって私が織田作の中にいるなんていう証拠、あるはずがないのだから。
だって私にすら原因不明なんだ。
陳腐な二次創作に出てくる神様のような存在とも出会ってないし、まして私は現世で死んでもいない。
乱歩さん、理由が分からないこの不可思議な現象を、貴方なら説明できるだろうか。
ならばその根拠とともに、是非とも私にも分かるように説明してみせてくれ。
さあ、今、ここで!

乱歩さんはぶすっと顔を膨らませて、一言、「話にならないな」と呟いた。

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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時

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