論破7 ページ8
「はぁ、はぁ」
まだ肌寒い早朝。ただでさえ寒がりな私はいつもより防寒し、当然風を浴びてしまう自転車を必死に漕いでいた。
我が校の正門が見え、中に突っ込む。自転車置き場に着くとチェーンロックをかける前に自転車から降りて、体育館へと向かった。
喉が渇き凍りつく。
口で呼吸を繰り返しているからだ。
今の私は陸に打ち上げられた魚みたいに情けない顔をしてることだろう。
乗り物を漕ぐときと走るときとでは、使う身体力がまったく違うから、疲れてしまう。そうでなくても私はもう、走っていない。
でも、走るのはやっぱり、気持ちがいい――
「は、はぁ、はぁっ」
走りにくいローファーで走り続け、たどり着いた体育館。扉は開いている。そこから運動部特有の、奇声のような雄叫びが聞こえる。
「……」
足が動かない。
いや、疲れたわけじゃない。ここから先へ進むことを体が拒否しているんだ。
だって、体育館の中にはあの人がいる。私が敵わないあの人がいる世界が広がっている。――それは先輩が幸せそうに過ごす世界。
でも……先輩が私を頼ってくれたんだ。
孤爪くんじゃなくて、私を。
それがどんな理由だとしても頼ってくれたのなら。
「――失礼します」
私は嬉しい。
そう、片思いは損ばかりじゃない。
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