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ミナトのその一言が脳内で解けた瞬間、ぽろりと大粒の涙がこぼれ落ちた。
驚きながらも自身の袖で優しく、私を傷つけないように涙を拭ってくれるミナトは、幸せそうに、自身も泣きそうな顔をしながら笑っていた。
私はそんな彼の手元にある白の輝き…もとい、指輪を見ながら、ぼろぼろと涙を溢れさせていく。
「…本当に?嘘じゃない?」
「勿論。オレが嘘つくわけないだろう?A」
「夢とか、ドッキリとか、幻術とか…」
「相変わらず疑い深いなぁ…笑。でも残念。これは紛れもなく現実だよ」
「っ…み、みなと…!」
「…待たせてごめんね、A。でもやっと、君とこの一生を彩る覚悟ができたんだ。…もう一度言うよ。オレと、結婚してください」
「っ…!」
感動のあまりミナトに強く抱きつけば、ミナトは優しく私を抱き締めてくれた。
彼の服に染み込む私の涙など気にせず、愛しいと言葉では飽き足らず体温でさえ伝えてくるミナト。
やがてそっと私を引き剥がし、優しく微笑んでから私の瞳を覗き込んだミナトは、ゆっくりと口を開いた。
「…ねぇ。返事を聞かせてくれないかな?A」
――分かっているくせに、意地の悪い奴だ。
私はミナトの肩を掴み、驚くミナトを他所目に一気に距離を詰めた。
押し付けるように唇を重ねて、悪戯に笑ってから私はこう言う。
「…絶対幸せにしてよね、私のこと!」
ニカッと笑いながらそう言えば、ミナトは随分と間抜けな驚いな表情をした。
それから気の抜けた笑顔を浮かべて、元気よく返事をする。
「…ん!もちろん!絶対に、幸せにするよ」
再び重ねられた唇。
触れるだけのそれで伝わってくる彼の熱が酷く愛おしくて、恋しくて。
それだけで満たされた心に、こいつはまた、水を注ぐのだ。
「…愛してるよ、A。誰よりも、君を愛してる」
「…私も。私も愛してるよ、ミナト」
世界一幸せだなんてよくあることは言わない。
別に、世界の何番目だっていい。世界で一番じゃなくたっていい。
だって、貴方が隣にいるだけで、私はこの世界を、貴方を、愛おしいと思えるのだから。
…そうやって笑い合った数日後、婚約を知った友人達が家に押しかけてくるのはまた別のお話。
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「本当は綺麗な夜景のあるところを貸切にして盛大なプロポーズしようと思ったんだけど、クシナとかその他諸々の人達に止められちゃったんだ」
「(止めてくれてありがとうみんな!!!)」
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作者名:朱猫 | 作成日時:2018年10月21日 22時