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「もうすぐオレは、20歳になるだろう?もう立派な大人だから、真剣に将来のことを考えてみたんだ」
ミナトは真剣な表情でそう言いながらマグカップを机に置き、少しばかり顔を俯かせた。
私を見ずに俯き続ける彼の横顔は私が見慣れたものではなくて、どこか大人びたその雰囲気に胸が甘い音を立てる。
やがてミナトは、静かに口を開いた。
「あのね、A。オレの、『火影になる』っていう夢は、昔から変わらないままなんだ。火影様からも一応、火影候補には入れてもらってる。それはAも知ってるだろう?」
「うん」
「もしも、もしもだよ?もしも、オレが夢を叶えて火影になったとして、オレは一人じゃ、火影なんていう大役はできない。補佐がいたり忍達の手がいるのは勿論なんだけど、オレ一人で、火影の名を背負っていくことは、凄くしんどいんじゃないか、って思うんだ」
「…うん、そうだね。確かに、火影は、たとえあんたでさえも物凄くしんどい重荷になるだろうね」
「うん。でも、そのときにね?火影の半分を一緒に背負ってくれる、オレの手をしっかりと握っていてくれる。そんな存在がいたら、オレはきっと、何だってやっていける気がするんだ」
「…要は、あんたを支えてくれるってこと?」
「ううん。お互いに、支え合うってこと」
「……」
――いつからこいつは、こんなに大人びた雰囲気を纏うようになったのだろうか。
落ち着いた声色と、しっかり現実を見ながらも理想を語る優しい青の瞳。
それがこちらへと意識を向けた瞬間、私は何故かぴしり、と固まってしまった。
「…その存在を考えたとき、オレ、一人しか浮かばなかった。その人以外、ありえないな、って」
…ねぇ、A。君のことだよ。
甘くも落ち着いたその声が、優しく私の脳に答えをくれる。柔らかいその響きが耳からすっと入り込んで、直接脳に届いて、私に確信させる。
――あぁ、ダメだ。まだ、心の準備ができていないのに。
不意にミナトが懐から取り出した白い小さな箱が丁寧に開かれ、柔い白の輝きが私の涙腺を刺激する。
体の奥から込み上げてくる感動と共に、ミナトは少しばかり顔を赤く染めて、ゆっくりと確かめるように言葉を繋いだ。
「オレの思い描く未来には、必ず君がいる。オレの隣では、必ず君が手を握ってくれている。…他の人じゃ、ダメなんだ。オレは、君と…Aと、これからを歩んでいきたい。………ねぇ、A。
――オレと、結婚してください」
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作者名:朱猫 | 作成日時:2018年10月21日 22時