3.翠の戯れ ページ7
昨日の今日とあって、外への扉は厳重警戒。センラは私にずっとついてくるし、スケジュールを聞いたら涙が出るほどキツキツに詰められていた。
センラに目線で訴えても首を振るだけで、がっくしと肩を落としながら、今日は朝からうらたとお勉強だった。
「お待ちしておりました、お嬢様。」
気味が悪いくらいにっこりと微笑んだうらたは完全なる黒でこの予定立てた張本人だろう。
『いーもん。さかたにおいしーケーキ作ってもらうもん。』
頬を膨らませて拗ねたようにすると、その頬を指で突っついて、笑っていた。うらたは私をおちょくるのが好きだ。本能で楽しんでいる。
「はいはい、センラにでも伝えて貰っておきますね。」
そう言いながら気の遠くなるほど分厚い本を2冊私の机の上に置いた。…ま、まさか……。
「今日はお嬢様の苦手な外国語のお勉強です。」
『午前中、ずっと!?』
「はい。」
あぁ、泣きそう。
-*-
「だから、違うっつってんだろ?どこにそんな話書いてあったんだよ。」
『え、この段落そういうお話じゃないの?』
「なんでそうもズレた答えが出てくるんだよ。」
前にも言った通り、私と執事4人は幼なじみ。てなわけで、公の場を通り過ぎると、敬語のけの字もない。ただのオトモダチ。
ただしスパルタ。
分厚い本を手に取って、読み始めたのは異国語で書かれたその土地で有名な童話。もちろん始めて見る話で私は首をかしげながら読み進め、それをうらたに説明する、という単純作業なのだが…。点で答えが合わず、私は彼をいらいらさせっぱなしだ。舌打ちが時計が針を刻む音のように定期的に聞こえる。
怒号が飛び交うのを覚悟して若干声を震わせながら読む。訳もさながら発音も難しくて、この国の人間はそんなに流暢に話せないよ。なんて言い訳にしかならず、執事4人は見事に喋るのだ。ハイスペック。
「…お!今のところ合ってる!その調子。」
うらたのずるいところは、こうやって褒めてくれちゃうところ。飴と鞭の使い方が上手。私みたいに単純なやつはすぐ彼の手の上で転がされる。うらたが扱い上手ってことにしておこう。
『これ、なんて意味?』
「ん?…あぁ、それは“さることながら”って接続詞で…」
私が本を片手に尋ねると、ぐいっと顔を近づけて手元を見た。あまりの距離の近さに息が止まった。
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さくらいろ(プロフ) - over the rainさん» 応援ありがとうございました!長い間何も更新しておらずすみません…これからはちゃんと更新を続けていくつもりですのでまた見ていただけると幸いです! (2020年3月22日 22時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
さくらいろ(プロフ) - くらっかーさん» 応援ありがとうございました!ようやく受験が終わったのでこちらの活動の方も再開させていただきます! (2020年3月22日 22時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
さくらいろ(プロフ) - 舞花さん» 舞香さん、アカウント変えて気づかないかもしれませんが、リクエストの方了解致しました!私も後々やまだぬきちゃんは出演させる予定だったので参考にさせてもらいますね!ありがとうございます(*´˘`*) (2020年3月22日 22時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 - 受験お互い頑張りましょう!また会いに来ます! (2020年1月1日 23時) (レス) id: 957c180cee (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 受験勉強大変ですよね!首を長くしてお待ちしてます! (2020年1月1日 9時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくらいろ | 作成日時:2019年11月4日 0時