11.My favorite remedy is … ページ33
♧side
「これは……」
「ますいですよね……。」
浅い息を繰り返し、いつも艶やかなミルクティーの髪がかかる前髪は汗で張り付いていて、紅潮した頬は子ども体温からくる血色のいい桃色なんかではなく真っ赤な、苦しそうな表情を浮かべるお嬢がいる。
天蓋付きのベッドの中にその体を埋もれさせ、そのまわりを俺らが囲んでいた。
そう。お嬢が風邪を引いた。
「…最近出ずっぱりやったから疲れたんとちゃう?二三日は寝込むで。」
坂田は体温計の温度と手首での脈測定などを並行しながらそう呟いた。
明らかに平穏よりも高い体温を見て困ったように顔を顰め、かと思うと眉をつりあげて怒った表情もみせる。なんだこいつ…。
「やっぱやめようや、街にでるの。」
「でもお嬢の意思やで?」
「お嬢は!体強いんとちゃうの!!俺らと一緒にしちゃかんの!」
そう頬を膨らませる姿はなんとも形容し難いが、さすがは末っ子と言ったところだろう。
「まあその事についてはお嬢が元気になってから話そう。」
「そうですね、まず今日は順番に様子見ましょう。」
俺、センラが残りをそう黙らせると、志麻はすぐに頷いたが、坂田は文句ありげに渋々頷いた。
そうして、備え付けの椅子に腰掛けた坂田が立ち上がろうとした時、その手を白い手が掴んだ。
『…やだ、…。』
「お嬢?……大丈夫やで、すぐ帰ってくるから。」
『………やだ。』
そういって弱々しい手つきでぎゅっとまた坂田の手を掴む。あれだけ怒りを顕にしていた坂田の顔がみるみるうちに困り顔になる。
耳赤いのバレてんぞ、くそ。
熱で理性も何も無い子どもの頃に戻ったのかってくらいいやいやと首を振るお嬢。ちょっと物珍しい感じがした。
まあ風邪のときはちょっと幼くなるのはいつもの事だけどさ。
『……うそ、行っていーよ、…ごめ…ん、なさい。』
喉が痛いのか喋りにくそうに言葉を並べると手を離して、口元まで掛け布団を引っ張りあげた。
それにもまた驚いた。
我慢したぞ、こいつ。
別に俺らはAに甘えられることが嫌いじゃない。むしろ嬉しいと思ってる奴が大半だ。特に最近はなんでか知らないけど自立しようとしてるからなおさら。
なのにまた一人で考えて我慢した。
それを汲み取った坂田はふわりと先程まで握られていた手でAの頭を撫でる。
Aにしか見せない優しい笑顔で撫でるもんだから安心しきったAはまた瞼を閉じた。
635人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくらいろ(プロフ) - over the rainさん» 応援ありがとうございました!長い間何も更新しておらずすみません…これからはちゃんと更新を続けていくつもりですのでまた見ていただけると幸いです! (2020年3月22日 22時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
さくらいろ(プロフ) - くらっかーさん» 応援ありがとうございました!ようやく受験が終わったのでこちらの活動の方も再開させていただきます! (2020年3月22日 22時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
さくらいろ(プロフ) - 舞花さん» 舞香さん、アカウント変えて気づかないかもしれませんが、リクエストの方了解致しました!私も後々やまだぬきちゃんは出演させる予定だったので参考にさせてもらいますね!ありがとうございます(*´˘`*) (2020年3月22日 22時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 - 受験お互い頑張りましょう!また会いに来ます! (2020年1月1日 23時) (レス) id: 957c180cee (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 受験勉強大変ですよね!首を長くしてお待ちしてます! (2020年1月1日 9時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さくらいろ | 作成日時:2019年11月4日 0時