1.オズマンサスの街 ページ2
レンガ造りの壁面を駆け抜け、いつも私を苦しめるコルセットもピンヒールも脱ぎ捨てて、街に降りる。
襟元の赤いリボンを揺らした新しいカードルを身にまとった。黒のスカートも可愛いでしょ?ブラウンの革靴だって、いつものに比べたら履き心地だって文句なし。
「あら、A様、おはようございます。」
『レーベルさん!おはようございます!今日の調子はどう?』
「実はいいワインが入ったのよ、味見してみる?」
『ふふっ、また別の機会に。』
酒屋を営むレーベル家はよくお屋敷にもいいお酒を運んできてくれる。どこで採れた葡萄だとか、新種の果物から作ったものだとか、いつも嬉しそうに話してくれる。
ただ、私は年齢的には大丈夫なんだけど、飲むなときつく言われているから飲みません。偉いでしょ?
石畳の小道を抜けると、そこには大きな港が広がっている。心地よい潮風と、賑わう声、私の身長の何倍もある船からは異国の言葉が飛び交い、皆楽しそうに売買している。
港すぐ近くにはこの街の名物の市場・「リーフマーケット」がある。大きな市場で、端から端までずっと出店が並んでいる。ちなみにリーフは葉っぱのことで、私が生まれるずっと前、硬貨ができる前は葉でやり取りしていたからだそう。
そんな市場を歩きながら、左右を見渡してパトロールの気分で街を歩く。
右肩に寄せて三つ編みをした長い髪が、私が歩く度に私の体にぶつかりながら揺れる。
“帰ったら”どーせ固く髪を結われるよ。今はゆるくたっていいでしょう?本来なら髪を解いて走り回りたいの。これでも我慢してるんです。
「よー!Aちゃん!今日は“ひとり”なのかい?」
「また抜け出してきたんかー?」
『朝からそんな呑みくれてどうするんですか…。』
「レーベルんとこの酒が上手くてよォ!!」
調子のいいこの漁師さんたちは朝から呑みまくっている。そして飲んでいるお酒はレーベル家のもの。レーベル家のお酒を嫌いな住民はきっとこの国にいない。
朝からどんちゃん騒ぎで「カンパーイ」なんて泥酔しきった声でワイワイやるのは、人様に迷惑かけなければ文句はないが………
「あんたたち!!仕事若いもんに全部ぶん投げてここで飲み食いするなんてどういったご身分だい!?」
そう。だいたい迎えが来るのだ。
今日は漁師の奥さんのスフレさん。怒鳴り声をよく聞きます。しかし、私の顔を見るとハッとして深々と頭を下げるの。そんなに畏まらなくたっていいのにね。
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さくらいろ(プロフ) - over the rainさん» 応援ありがとうございました!長い間何も更新しておらずすみません…これからはちゃんと更新を続けていくつもりですのでまた見ていただけると幸いです! (2020年3月22日 22時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
さくらいろ(プロフ) - くらっかーさん» 応援ありがとうございました!ようやく受験が終わったのでこちらの活動の方も再開させていただきます! (2020年3月22日 22時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
さくらいろ(プロフ) - 舞花さん» 舞香さん、アカウント変えて気づかないかもしれませんが、リクエストの方了解致しました!私も後々やまだぬきちゃんは出演させる予定だったので参考にさせてもらいますね!ありがとうございます(*´˘`*) (2020年3月22日 22時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 - 受験お互い頑張りましょう!また会いに来ます! (2020年1月1日 23時) (レス) id: 957c180cee (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 受験勉強大変ですよね!首を長くしてお待ちしてます! (2020年1月1日 9時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくらいろ | 作成日時:2019年11月4日 0時