階級・甲の癸さん拾陸

709話　鬼舞辻side ページ15

鬼舞辻「名前は何だ。」



いつまでも貴様と呼ぶのも変な感じがした。



だから問い掛けると…少女は首を傾げる。



「…なんで？」



鬼舞辻「…行く場所がないのなら、此処に居ればいい。

此処に居るのなら…貴様と呼び続けてもおかしな話だろう。」



そもそも名前を聞くのはおかしなことではない。



それなのに何故そんなに不思議そうな顔をするのか。



「…ごめんなさい、」



突然謝る少女を不思議に思い、少し顔を覗き込む。



少女の顔はどことなく曇っていて…何か言ってはいけないことを言ったのかとさえ思える。



鬼舞辻「…何が、」



「名前、なくて。」



…大方、普通でない髪色や目の色をしたこの少女は、家族に見捨てられ…たまたま引き取られた場所でも迫害されるか何かをされていたのだろう。



それもまだこんなに幼い少女だ…名前も何も知らないまま、もしかしたら付けられもしないまま…捨てられた可能性も有り得る。



鬼舞辻「…春姫(はるな)。」



「…？」



鬼舞辻「…名前がないのなら、それで良いんじゃないのか。」



…とある春の日に出会った、可愛らしい少女。



可愛らしい少女を姫と比喩してもおかしい話ではないだろう。



春姫「…はるな、」



鬼舞辻「嫌なら、」



春姫「うれしい！」



そう言った少女…春姫は、私に抱き着いてくる。



鬼舞辻「…おい、」



春姫「ありがとうございます…！」



…何故魔こんな幼い少女が、私の心に入ってくるんだ。

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