01【調査兵団加入決定】 ページ3
大人しく着いていくと、教官達の私室がある棟の応接室に着いた。
どっかりと先にソファに座り、立ったままの私を見て「座れ」と向かいのソファを指差す。
言われた通り向かいに腰を下ろす。正面だと、目付きの鋭さがより際立っている。
矢の先端の如く鋭い眼光をこちらに放ち、薄い唇を震わせた。
「お前は今から調査兵団の仲間入りだ、訓練は俺達の拠点で受けてもらう事となった」
「―――」
僅かに目を見開いて、息を詰まらせる。その反応は当たり前だと言わんばかりに、彼は黒瞳を細めた。
あまりに突然の異動通告。そして、まさか望んでいた兵団に勧誘されるとは思っていなくて。
だが、まだ実力を測っていないのに兵団へと引き抜かれる事には、首を捻る他ない。
混乱に陥りそうだった脳を叱咤し、冷静に頭を動かす。
震える呼吸を整え、地雷を踏み抜かないよう、慎重に彼らの思惑を尋ねた。
「質問しても?」
短い許可を求める言葉を聴いて、静かに頷く。どうやら質問には答えてくれるらしい。
なら好都合だ。
「私がサルバトーレ家の生き残りだから、強者だらけの兵団で養え……なんて、命令が下った?」
「―――」
的を射た、的確な言葉だっただろう。その証拠に彼は少し、反応を見せてくれた。
兵士を志望した時、ちゃんと他家に言ったはずなのだが……やはり、そう簡単に見逃してはくれなかったか。
己の肘を抱き、嘆息する。目に掛かる前髪を払い、呆れたように額に手をやった。
「とんだご迷惑を……彼等には、もう放っておいてくれと言ったんですけど」
それにスカーフの位置を正しながら、面倒くさげに言う。
「そういうわけにもいかねぇだろ。お前は今や数少ない貴族の生き残りなんだ」
それもそうですね、と笑う。しかし彼は私の笑顔が気に入らなかったのか、あからさまに顔をしかめた。
本物の笑顔に見えるぐらい鍛えたんだけど。まあ、この人そういうのに敏感そうだからな。
「貴族の命令にあなた方は逆らえませんからねぇ」
「そうだが、一つ教えておこう」
愛らしく小首を傾け、言葉を静かに待つ。彼は細長い人差し指をこちらに向け、言った。
「確かに俺達はお前らの前では無力にも等しいが、俺達を嘲笑い、無防備に向けたその背には、いつだって刃を差し向けている」
他の貴族が聴けば逆上するだろう。けれど、勇敢な彼の意見は面白いと感じた。
今の意見、私も弱い貴族とまとめられたからか。
決して仲良くはなれないんだろうけど、弄り甲斐はあるんだろうなぁ―――
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
