15【芽吹く弱さと強さの証明】 ページ17
力を抑える訓練を終え、お風呂を済ませた私は夕食の時間まで部屋で過ごす事に。
夕焼けに染まっている室内をぐるりと見渡し、一個だけある窓を見つめ、首を傾ける。
「カーテン付けようかなぁ。朝一目に入るのがたた眩しいだけの朝日なんて、朝から気分下がっちゃいそう」
一点の曇りがない窓にはカーテンが付いていない。まあ、私室なので体調だけでなく、部屋の自己管理も仕方ないのだろうが。
これだったら兵舎の方がましだ。
一人じゃないし、面白そうな人を何度か見かけた。ハゲと、なぜか芋の食べかすが口許についてる女の子。
何にも考えていなさそうな感じがして楽しそうと思って。――いいな、と思った。
私が羨望したのは純粋な力だけだったはずなのだが、いつの間にか誰かと居る人にも羨んでいる。
心が弱くなっていってるようだ。
……それとも、思い出しているのか。
『―――目を瞑って。耳を塞いで。遠くまで走ったら、大きな声で「お父さん」と叫んで』
「……夢を見ることなんて、諦めたつもりだったのかしら……」
脳裏に甦る懐かしい声にそう呟く。――まだ、独りになりきれていなかった幼い時分を恨むように。
放任主義の親を持ったせいか、独りが嫌だと言う弱さを消しきれていない。
しかし、いずれこの弱さは消すまでもなく、無くなるだろう。――壁外へと赴く私達はみんな、独りきりなのだから。
「おい、いるか?」
思考の迷宮に堕ちていたところ、扉越しに無愛想な声が掛けられた。
つい先ほどまで聞いていた声。名前など尋ねなくても、もうわかってしまう。
「ええ、います。開けますね」
取っ手を引いて扉を開ける。軋む音を立てて開いた扉から、想定した通りの人物が立っていた。
鋭すぎる目付きと愛らしい身長。何を隠そう、リヴァイだった。
だがその格好は兵服ではない、ラフな格好をしているので恐らく私服だ。
風呂上がりなのか首からタオルを下げ、首筋に浮かんだ汗を拭う。艶やかな黒髪はしっとりと濡れていて、大人の色気というものが溢れていた。
「……兵長」
「なんだ?」
「風呂上がりの淑女の部屋を尋ね、おまけに自分も風呂上がりで火照った体のままだなんて。もしかして――夜這い?」
「そこまで被害妄想膨らませるお前は被虐願望者なのか?悪いが、俺は望まれていたぶるのは面白くないからしないんだ」
「ああ、それは同意よ。泣き喚いて許しを乞う野郎に絶望を与えるのって、最高だもん」
「ほう。なら一度、お前に拷問を任せてやろうか」
「ふふ、楽しみにしておくわ♪」
続く (更新停止中)
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