*51【隠し条件と疑問】 ページ7
「死神さんを助けに行くための、隠し条件を教えて」
そう言い放った少女の瞳は力強かった。
赤い瞳が松を捕える。
「"三十分逃げ切る"という他に、隠された条件があると言いたいの?
何か確信でもあるのかしら」
「確信は……ない。自分の感じた違和感を信じただけ」
そう呟いた少女は、先程の力強い眼差しから悲しそうな表情を浮かべた。
まるで、何か苦しかった日々を思い出しているかのように。
(あぁ、矢張りこの子は面白い)
松の口が弧を描く。
「大正解、アンタたちにまだ言っていない条件があるのよ」
「…それはどんな」
「隠し条件なのにここまで気づけたのなら殆ど合格よ。ヒントは、アタシの"ある物"を奪うこと」
そう言って、試すようにあかりを見つめると、少女は眉をひそめて上から下までまじまじと見つめた。
「(奪うって…何を?)」
あかりは松を見つめる。
くるくると巻かれた赤毛に、上は白いカーディガンを羽織っていて。
下は赤色のプリーツスカートを履いている。
改めて見ると、顔は男っぽいのに服装は女のため違和感があるな、と思う。
たが口に出せば即捕まりそうなので言わない。
「……あっ」
その時、彼女の腰のあたりで何かがキラリと光った。
目を凝らすと、それは
「……鍵?」
「ふふ、やっと気づいた?」
松は腰に括り付けている鍵をチャリンと揺らしてみせた。
「この鍵を取れれたら、アンタ達を天音ちゃんの所へ連れて行ってあげる♡」
「…分かった」
隠し条件は聞き出せた。
あかりはフッと短く息をはいて口を開く。
「それと、一つ聞きたいことがある」
「なぁに?」
「……どうして、私達に手を貸してくれるの?」
それは、会ったときから抱いていた疑問だった。
死神と特別仲が良いわけでは無さそうだし、その上攫われた彼を人間が助けに行くなんて前代未聞だろう。
だから気になるのだ。
自分たちに手を貸す理由が何なのか。
もしかしたら、彼女は何か企んでいるのかも知れない。自分たちを利用するのかも。
そう考えてると体が強張った。
しかし
「アンタたちのやることに、興味があるだけよ」
「え…?」
どんなことを言われるのかと身構えていたが、予想外の単純な答えに一瞬固まった。
まだ疑問が拭えないあかりだったが、松はそれ以上深くは話さなかった。
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ぺぽん(プロフ) - あくるさん» あくるさん、ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです!気長に待っていてくださると幸いです。 (10月18日 10時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
あくる(プロフ) - コメント失礼します。すごくこの作品好きです!また更新が再開するのを楽しみにしています! (10月17日 22時) (レス) @page40 id: 64a42a1344 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 瀬戸 こすずさん» コメントありがとうございます!更新停止となりましたが、応援していると言っていただけて本当に嬉しいです。こうしてコメントをいただけると読んでくださっているんだな、と実感できて頑張ることができます。ありがとうございます! (7月15日 19時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
瀬戸 こすず - 最近改名しました!一ノ瀬こももです。更新停止は寂しいですが、私はずっと応援します!頑張ってください! (7月15日 17時) (レス) @page34 id: 8b7f4b66dd (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 一ノ瀬 こももさん» 作品を読んでくださりありがとうございます。面白いと言ってくれることが本当に嬉しいですし、作品を書き続ける活力になります…!もっと読みやすく、綺麗な表現が出来るように頑張りますので、これからも応援よろしくお願い致します🙇 (6月18日 18時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺぽん | 作成日時:2022年8月14日 11時