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*79【殺したのか】 ページ35

どれくらい走っただろうか。
時計がないので時間なんて分からない。
カラフルな扉をいくつも通り過ぎた先に、一際大きな白い扉を見つけた。



「あそこが…ボスの部屋」



明らかに他の扉とは違う雰囲気に、直感で分かった。
ボスの部屋に辿り着いたのだと。



荒い息を繰り返しながら立ち止まり耳を澄ますと、何やら鎌同士がぶつかり合う音が聞こえてきた。



「死神さんっ…」



咄嗟に白い扉に手をかけ、勢いよく開く。
扉が開くと同時に目の前に映った光景は、
"白い床に横たわる死神"と、それを見つめる長身の男だった。



「…え」



唇から小さな空気の塊が零れ出る。
それに対し、男はあかりの顔を見た途端、これでもかと目を見開いた。



「君は…天音くんのターゲットの…」



どうしてお前がここに居る。
そう言いたげな表情をした男だったが、瞬時に微笑みを浮かべると口を開いた。



「まさか君の方からこの世界に来てくれるとは感激だよ。でもどうやって___」



「死神さん!!」



男の言葉を遮って、あかりは飛びつかんばかりに死神の元へ駆け寄り、膝をついた。
床にぐったりと横たわる彼の様子に、あかりの顔は真っ青になる。



「死神さん…死神さん!起きてよ!!」



体を揺すっても死神の瞼は閉じたまま。
偶然触れた彼の手は氷のように冷たかった。



「(まさか。まさかまさかまさか…!)」



あかりの脳内に『死』の文字がこびり付く。
"間に合わなかった"のだろうか。



ピクリとも動かない体、
閉じたままの瞼、
メイに裂かれた腹の傷、
そして氷のように冷たい手。



体の芯から指先まで震えていくのが分かった。
細かく震える唇から小さく言葉を放つ。



「死神さんを…殺したの?」



瞬き一つせず、ゆっくりと顔だけを男に向ける。
その時初めて、男の瞳が血のように真っ赤であることに気がついた。



自分と同じく赤い瞳を持つ男は、平然と答える。



「天音くんのことは殺していない、安心したまえ。それより、だ」



殺していない、死神は死んでいない。
それが分かりホッとしたのも束の間、あかりは小さく悲鳴をあげた。



男があかりの顎を掴み、無理やり顔を上げさせたからだ。
男の、氷のような冷たさの手に体が固まるような感覚に陥る。

*80【様子がおかしい】→←*78【両者の信念】



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設定タグ:死神 , バトル , 友情   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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ぺぽん(プロフ) - あくるさん» あくるさん、ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです!気長に待っていてくださると幸いです。 (10月18日 10時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
あくる(プロフ) - コメント失礼します。すごくこの作品好きです!また更新が再開するのを楽しみにしています! (10月17日 22時) (レス) @page40 id: 64a42a1344 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 瀬戸 こすずさん» コメントありがとうございます!更新停止となりましたが、応援していると言っていただけて本当に嬉しいです。こうしてコメントをいただけると読んでくださっているんだな、と実感できて頑張ることができます。ありがとうございます! (7月15日 19時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
瀬戸 こすず - 最近改名しました!一ノ瀬こももです。更新停止は寂しいですが、私はずっと応援します!頑張ってください! (7月15日 17時) (レス) @page34 id: 8b7f4b66dd (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 一ノ瀬 こももさん» 作品を読んでくださりありがとうございます。面白いと言ってくれることが本当に嬉しいですし、作品を書き続ける活力になります…!もっと読みやすく、綺麗な表現が出来るように頑張りますので、これからも応援よろしくお願い致します🙇 (6月18日 18時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぺぽん | 作成日時:2022年8月14日 11時

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