*61【助けに行く理由】 ページ17
ガンッ!
松が振りかぶった鎌の攻撃を、瑛斗は真正面から受け止める。
余裕な笑みを浮かべるが、腕はだんだんと痺れてきていた。
「ハッ、さすが…女の見た目してる男なだけあるじゃねぇか」
「あら、酷いこと言うわねぇ。アタシは女だって言ってるでしょ?」
ぐん、と腕にかかる力が増す。
脚と手を力いっぱい踏ん張らないと押しつぶされてしまいそうだ。
『なんとかしてこの状況を抜け出さねぇと…』
「っ!」
その時、視界の隅で何かが動いた。
松の後ろ、建物の影。
そこから覗いた姿を見て瑛斗は目を見開いた。
「(樹!)」
心の中で叫ぶ。
生きていたんだ。
ホッと安堵したのも束の間、手にかかっていた重さが無くなり右側から猛スピードで松の鎌が迫ってくる。
その攻撃を空中へとジャンプして躱した瑛斗は、松から距離を取って着地する。
「一つ、聞いてもいいかしら」
松は鎌を下ろし、静かな口調で尋ねた。
「どうして命をかけてまで天音ちゃんを助けに行こうとするの?どうせ他人じゃない。しかも彼は死神。居なくなったところで、現実には何の影響もない」
「……」
彼女の口調は至って冷静だった。
「確かに、アイツはよく分かんねぇ。
考えてることも分からなければ、どうして死神になったのかすら教えてくれねぇし、人のこと馬鹿にするムカつく奴だ」
「結構言うわね」
「でも!」
それでも死神を助けに行く理由。
瑛斗の脳裏にあかりの笑顔がよぎった。
それを察したのか、松は楽しそうに笑う。
「恋の力、かしら?」
「そんなんじゃねぇ!……ただ、あかりは死神に会って変わったんだ。アイツが居ねぇとあかりが悲しむ」
「ふふ、かわいい子」
瑛斗は再び脚と手に力を込める。
そして建物の影に隠れている樹と目を合わせた。
松の腰にある鍵を見つめて、短く息を吐く。
「(大丈夫だ、俺と樹なら出来る!)」
次の瞬間、一気に松と間合いを詰める。
「おらぁぁぁああ!」
「理由を知ったからって油断しないわよ。何度来たって一緒」
全神経を集中させて松に攻撃をたたみ掛ける。
彼女が体勢を崩す、その一瞬が勝負。
「うぉぁぁああ!」
鎌同士がぶつかり合う。
そして、ついにその時が来た。
松が瑛斗の攻撃にほんの一瞬、怯んだのだ。
「樹!今だぁぁぁ!」
その言葉を待っていたと言わんばかりに、樹が建物の影から飛び出した。
その手が、彼女の腰にある鍵に伸ばされる。
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ぺぽん(プロフ) - あくるさん» あくるさん、ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです!気長に待っていてくださると幸いです。 (10月18日 10時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
あくる(プロフ) - コメント失礼します。すごくこの作品好きです!また更新が再開するのを楽しみにしています! (10月17日 22時) (レス) @page40 id: 64a42a1344 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 瀬戸 こすずさん» コメントありがとうございます!更新停止となりましたが、応援していると言っていただけて本当に嬉しいです。こうしてコメントをいただけると読んでくださっているんだな、と実感できて頑張ることができます。ありがとうございます! (7月15日 19時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
瀬戸 こすず - 最近改名しました!一ノ瀬こももです。更新停止は寂しいですが、私はずっと応援します!頑張ってください! (7月15日 17時) (レス) @page34 id: 8b7f4b66dd (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 一ノ瀬 こももさん» 作品を読んでくださりありがとうございます。面白いと言ってくれることが本当に嬉しいですし、作品を書き続ける活力になります…!もっと読みやすく、綺麗な表現が出来るように頑張りますので、これからも応援よろしくお願い致します🙇 (6月18日 18時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺぽん | 作成日時:2022年8月14日 11時