【オリジナル】死神は私を殺せないそうです２

＊56【紙飛行機は攻撃の合図】 ページ12

瑛斗と樹は松を睨む。
対して松は余裕の笑みを浮かべていた。




「アンタ達はこれで終わりよ。もうゲームの残り時間も十五分を切ってるし、なにより…」




松は二人を指差して言う。




「隠し条件が何か知らないじゃない」




三人で隠し条件を見破ったところまでは良かったのに、あの少女が捕まったことによって全てが台無し。




そう思うと可哀想になり、同情に溢れる視線を送る。




「まぁ、アタシも中々に鬼畜な条件を与えてしまったと思って反省しているの。
でもこれは決めたことだから」




天音ちゃんを助けに行くのは諦めることね。
そう言って薄く笑ったとき、ふと気づいた。




樹が、手の中に何かを隠し持っていることに。




「何を隠しているの？
アンタ達はどう足掻いても無駄…」




松の言葉を無視し、樹は手の中を見せる。
それは、小さな"紙飛行機"だった。




二人はそれを開いて見た途端、ニヤリと口の端を上げる。




「無駄かどうかはやってみないと分かんねェよ？」




「はは、その通りだな瑛斗」




追い込まれている筈なのに、まだ笑っている。
それどころか、逆に勝ち誇ったような表情で自分を見つめる二人に首を傾げる。




「…その紙飛行機はなにかしら」




「あかりが俺らに向けて飛ばした伝言だ」




はは、と愉快そうに笑い、樹は言った。




「あかりの作戦能力を舐めてたよ。意外と頭が良いらしい」




「まさか…」




松の目が見開かれる。
思い出すのは、少女を捕まえる少し前のこと。




『あの少女、背中に回した腕で何かをしていた』




きっとあの時、聞き出した隠し条件を紙に書き、飛行機を折っていたのだ。
そして、捕まって異空間に飛ばされるほんの一瞬の隙に、窓から紙飛行機を飛ばした。




「ふふ、あはははっ！凄いわねあの子」




今この瞬間まで、全く気が付かずに余裕ぶっていた自分。
それが可笑しくて、笑いがこみ上げる。




［松の腰にあるカギを奪え］




開いた紙飛行機をもう一度確認し、樹は笑う。
本当に上手くやってくれたな、と。




「(あかりは、自分を犠牲にしてまで死神のこと、助けたいんだな)」



　
樹はゆっくりと目を閉じ、開ける。
その瞳には決意が宿っていた。




「準備はいいか？瑛斗」




「ハッ、勿論だ」




次の瞬間、強く吹いた風に任せるようにして樹は紙を手放す。
天高く飛ばされる白い紙が、攻撃の合図を告げた。

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