36、自分達のやるべきこと ページ37
Aを乗っ取った人物が探偵社から去り、社内には沈黙だけが残る。
暫く国木田は一点を見つめていたが、何かを決心したように呟いた。
「太宰、今日の仕事は任せたぞ」
「国木田君…まさかAちゃんを助けに行くつもりかい?」
「当たり前だ!」
国木田は叫ぶ。
その瞳は揺るがない意思を感じさせた。
「落ち着け国木田」
緊迫する雰囲気の中、乱歩は冷静に言った。
それは、傍から見れば興味が無いとも受け取れる態度だった。
「国木田が今行ってどうなるのさ。
Aを攫った奴の目的はお前だ。相手の思うツボだぞ」
「…分かってます」
国木田は拳を爪痕が残るくらいギュッと握った。
奴の目的は自分。
だからこそ、巻き込んでしまったAを一刻も早く助け出さなければいけないと思うのだ。
「けど俺は…彼奴に伝えないといけないことがある!場所はもう検討がついています」
言うが早いか、国木田は探偵社を出ていこうとする。
「どうしても行くのか」
「すみません乱歩さん。…この事件は俺のせいで起こったことです。彼奴のことをもっと見てあげていれば、こんなことには」
そう言って国木田は探偵社を出た。
パタン、と扉が閉まる。
残された社員は険しい表情を浮かべる。
自分達には何が出来るのか、それを必死に考えていた。
そんな中、太宰と乱歩だけは何事も無かったかのようにデスクに戻っていく。
太宰は鼻歌を歌いながらパソコンを開き、乱歩は飴を舐め始めた。
他の皆はその様子を呆気に取られた様に見つめるが、二人は気にする素振りも見せない。
敦が怪訝そうに聞く。
「…太宰さん、国木田さんが心配じゃないんですか?」
Aと国木田の命が危険だというのに、一体何を考えているのか。
「べつにー」
「べつにって…!」
敦がカッとなり、何かを言おうとしたその時
「乱歩さんは全部分かっているのでしょう?」
太宰はニコッと乱歩に笑いかけた。
少しの間そっぽ向いていた乱歩は、はあーー、と深いため息をはく。
「まーったく!僕が居ないとなぁんにも分かんないんだね君たちは!」
「…え?」
敦達はポカンと口を開ける。
「今の国木田は説得してもAを助けに行くだろう」
「じゃあどうすれば」
「僕たちの今やるべきことは他にある」
そう断言した乱歩はガリッと飴を噛み砕いた。
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ゆいたろー!(プロフ) - ぺぽんさん» わー!有難う御座います!この作品また見たいと思ってたので嬉しいですッ!! (1月24日 21時) (レス) id: 09168e2c17 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - お相手の作品が削除されたことを確認しましたので、再び公開しようと思います。これからもこの作品をよろしくお願い致します。 (1月15日 17時) (レス) id: a5e819fb1a (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ゆいたろー!さん» ゆいたろー!さん、申し訳ありません。悩んだ末、二章以降を非公開にすることを決めました。こちらを読んでくださる人もいることは重々承知していますが、このまま盗作され続けるのは嫌でした。 (1月10日 18時) (レス) id: a5e819fb1a (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ゆいたろー!さん» 完結した後でも作品を読んでくれている方がいるのは、とても嬉しいです。作品を書き続ける活力になります。これからもこの作品をお楽しみください。他にも作品を投稿しているので、お時間があればそちらもぜひ。 (1月10日 17時) (レス) id: a5e819fb1a (このIDを非表示/違反報告)
ゆいたろー!(プロフ) - いえいえ、お役に立てて光栄です。これからもこの小説楽しませていただきます (1月10日 17時) (レス) id: 09168e2c17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺぽん | 作成日時:2022年5月7日 15時