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31、仇討ち ページ32

兄が人を殺した?
あんなに真面目で理想を貫くような人が?




それに、私は兄に捨てられた……?
他人に言われたことなんて信じられない、信じたくない。




でも、




『そう考えれば違和感の辻褄が合う』




あまり目を合わせてくれないことも
四年間連絡が取れなかった理由も
態度が素っ気なかったことも




私のことが嫌いだから。




父が死んだのと同じ年に家を出ていったのも、私のことが嫌いで…
二人で暮らすのが嫌だったから?




『あぁ…本当に、彼の言う通りかもしれない』




直哉は耳元でそっと囁く。




「そう。彼奴は、妹である君を捨てた。
僕に協力してほしい。A、君も彼奴が憎いだろう?自分を捨てた兄が」




何か変だ。
頭がふわふわする。
直哉の言葉が、呪文のように入り込む。




「憎い……憎い、お兄ちゃんが憎い」




「国木田独歩を殺したい?」




自分でも何を言っているのか分からない。
でも、口が勝手に動いてしまう。




「……殺したい」




私の意識はそこで途切れた。








前のめりに倒れる少女を、片腕で受け止める。




「なんだ、意外と簡単に墜ちてくれんじゃん」




感情の色が見えない声で呟いた直哉は、途端に口元をほころばせた。




「くく、っあはははは!」




漸く、彼奴に復讐出来る。
そう考えただけでワクワクした。
おもむろに、少女の服につけていた或るものを探す。




「…ない」




初めて会った時、少女にしかけた小型の盗聴器。
昼頃から急に音が聞こえなくなり、故障かと思ったが。




「バレたか」




相手はあの武装探偵社。
見つけられて壊されてしまったのだろう。
それでも直哉の笑みは消えない。




欲しい人物は手に入った。
あとは騙すだけ。








「兄さん」




聞き慣れた声に振り向くと、
そこにはフードを被った人影があった。




「あぁ、やっと来たね(まこと)




直哉は微笑むが、弟である誠の表情はどこか暗い。




「本当に彼奴を、殺すの?」




「殺すさ…この憎しみは一生消えない。
父さんも仇を取ってほしいと思っているはずだ」




直哉はAを抱き上げて歩き出した。
誠は一人、空を見上げる。




紫色にぼうっと光る月が、辺りを不気味に照らしていた。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 国木田独歩 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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ゆいたろー!(プロフ) - ぺぽんさん» わー!有難う御座います!この作品また見たいと思ってたので嬉しいですッ!! (1月24日 21時) (レス) id: 09168e2c17 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - お相手の作品が削除されたことを確認しましたので、再び公開しようと思います。これからもこの作品をよろしくお願い致します。 (1月15日 17時) (レス) id: a5e819fb1a (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ゆいたろー!さん» ゆいたろー!さん、申し訳ありません。悩んだ末、二章以降を非公開にすることを決めました。こちらを読んでくださる人もいることは重々承知していますが、このまま盗作され続けるのは嫌でした。 (1月10日 18時) (レス) id: a5e819fb1a (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ゆいたろー!さん» 完結した後でも作品を読んでくれている方がいるのは、とても嬉しいです。作品を書き続ける活力になります。これからもこの作品をお楽しみください。他にも作品を投稿しているので、お時間があればそちらもぜひ。 (1月10日 17時) (レス) id: a5e819fb1a (このIDを非表示/違反報告)
ゆいたろー!(プロフ) - いえいえ、お役に立てて光栄です。これからもこの小説楽しませていただきます (1月10日 17時) (レス) id: 09168e2c17 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぺぽん | 作成日時:2022年5月7日 15時

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