迷子のコメット / 2 ページ6
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「アンタ起きたのね」
ゆりが部屋を出て数分、今度は見知らぬ少女が部屋を開けた。芯のある高い声は、まだ思考のまとまらないAに突き刺すように響いた。
Aはハッとして伏せていた顔を上げて驚いた。頭のてっぺんからつま先まで、まるで美少女という言葉をそっくりそのまま体現したかのような美しい風貌をした少女がそこにいたのだ。同性であるはずのAがどぎまぎしてしまうような可憐な少女である。
Aは突然の来訪者に驚き固まるのも無視し、少女ーーー小南桐絵はベッドサイドまでつかつかとやって来てAを見下ろした。
小南の目的は突然迅が連れてきた少女の様子見である。迅が慌てた様子で連れて来た少女がどんなものなのかと気になったのだ。
「具合はどうなの。お腹減ってたりする?」
「だ、大丈夫です。今ゆりさんがりんご切りに行ってくださって、その」
「そう」
小南はおどおどと小さく身を縮こませるAを見て、どうして迅が慌てて保護するに至ったのかが分からなかった。
別に保護ならボーダー本部でするに越したことはない。手当され、記憶措置を受け、そうして怖いことは何も無かったのだと意識を変えられて元の生活に戻ることが出来るのだというのに、目の前で小さく手を組むAは近界民を見た恐怖に囚われたままのように見えたのだ。
小南は眉を顰めると同時に部屋のドアが再度開き、盆を持ったゆりが戻ってきた。ゆりは小南がいるのに気づくと楽しそうに笑いながら部屋に踏み入った。
「やっぱりいると思ったぁ」
「なによ!いてもいいでしょ!」
「いると思ったからりんご3人分切ってきたよ」
「やった!アンタも食べなさい、このりんごすっごく甘くて美味しいんだから」
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作者名:40 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年6月6日 22時