生かされた冥王星 / 3 ページ32
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「まあ言いたいことはさ、これもどこかの世界の並行世界の一部で、だから常識の食い違いとか、共通の娯楽があるのかもねって話」
「平行世界……」
「そう。まあでも、たまたま君がやってきたこの世界ではちょっと悪い前例が着いちゃったからきみもそうなんじゃないかって疑っちゃってるの」
「それが、ねいばー……?ってやつなんですか」
「うん。きっと近界民の進行がなければきみの世界とあんまり変わらなかったんじゃないかな。多少違うことはあれど」
寺島のその言葉に、ストンと何かが腑に落ちる。
そんな解釈はじめてだった。前向きで、どこかくだらない話。周りからしたらきっと夢の見すぎと言われてしまうようなそれを、その腫れぼったい瞳は正直に世界を映していた。Aの身の上を同情するわけでもないが否定をする訳でもない。だが寺島雷蔵てしての一個人の意見は、居場所を求め彷徨う少女に少しの希望を与えた。それが事実だった。
Aがそれまで諦めていた帰り道を、少し思い出す。
もし本当に平行世界ならまたなんらかの弾みで帰れるかもしれない。
「ダイ・ハード」
「えっ」
「好きだったよね。さっき話した」
「……?はい」
寺島はその表情と声色を得に崩すことなく、とんとんと言葉を並べる。
「ダイ・ハードってタイトル、なかなか死なないって意味らしいけど、別の訳だと最後まで頑張る人って意味もあるんだってさ」
「きみに、ぴったりだと思うよ。おれは」
ダイ・ハード。
最後まで頑張る人。
突然のことに気を取られる。だが言葉を咀嚼しながら、Aははっとする。寺島は今自分を元気づけようとしてくれたのではないかと。自惚れでもいい。ただ、その優しさの矛先が自分である事実がAを勇気づけた。
最後まで、頑張る人。
口下手な寺島からでた激励は、Aの胸の中でじわりと滲んだ。それまで抱えていた不安や恐怖が、たったその言葉で溶けていくのだ。いや違うかもしれない。そう、言ってくれる人がいることに、Aの気持ちは溶かされていたのかもしれない。
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作者名:40 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年6月6日 22時