生かされた冥王星 / 2 ページ31
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年相応の子だな、と寺島は思った。
寺島はうれしそうに笑むAを見ながらふと思いついたかのように言葉を続ける。
「そういえば、映画は通じるんだね」
Aは確かにと目を見開いた。
Aの持っていたスマートフォンの機種は確かにこの世界では通じなかった。大手有名会社の機種だったと言うのに、この世界では見知らぬ会社の知らない機種だった。その事実にAは初日痛いほど絶望を見せられたというのに、たった今寺島と交えた映画の内容は通じる。話の食い違いもなく、俳優の名前だって一緒だ。どこか歪に歪んだこの世界に、Aの背筋は自然と伸びる。
なにがおかしくて、なにがよくて、なにが悪くて、なにが許されるのか。
分からないそれを目の前の彼に求めても無駄だと分かってるのに、Aは縋るような気持ちで寺島を見つめた。寺島はそんなAの視線を受け何をくみ取ったのか、少しのあいだ黙るとまた口を開く。
「シュレディンガーの猫って知ってる？」
「えっと、毒ガスのやつですよね。箱に閉じ込めた猫が生きてるか死んでるかは箱を開けるまでは分からないっていう」
「そう。まあ意味は違うんだけどさ、きっと何かの箱にこの宇宙ごと詰め込まれてて、」
何を言ってるんだろう。
分からないままにAは寺島の言葉を聞く。なにか救われる言葉であることはきっと確かだと、Aはそう思ったからだ。
「どういう世界ができる可能性があるのかって実験されてるのかもしれない。平行世界を題材にした映画もあるでしょ、パラドックスとか」
「あれは……」
「まあ言いたいことはわかるけど」
こういうとき、言葉にするの難しいな。なんて寺島は言葉を零しながら頭をかいた。
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年6月6日 22時
