一等星の閃き / 2 ページ15
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ボーダー本部側としては保護をしたいのは山々だ。たった十四年とちょっとしか生きていない戦う術を知らない小さな少女を、護るのは元々の組織の行動指針としては充分当てはまる。だがしかし、揃った状況あまりにも悪すぎる。
異世界からきた異邦人。突然なんの前触れもなしに現れた少女の腹の底が見えない状況を、簡単に受け入れることなどできないのも事実なのだ。もし、少女が強大な力を隠し持っていた時、市民を護る組織が、平穏を壊すことになる。人の命を守る仕事をしている以上、簡単な決断はまた誰かの命を奪うも同義であった。
だからこそ、この一件に対して会議は進まず平行線の一途を辿っていた。
そんな裏でのやさしい攻防戦を知らぬまま、Aは玉狛での生活に順応していった。面倒見のいい人間の多い支部故に、Aの警戒心は当初に比べてだいぶ落ち着き、今では軽い冗談で笑い合える余裕も生まれていた。
「小鍛冶、野菜を切ってくれ」
「わかりました」
「切る時は、」
「猫の手、ですよね」
「ああ」
とりわけ木崎はAのことをかなり気遣っていた。というのも、接し方に困った結果がこうなった、というのが正しいだろう。
元より気の強い小南くらいしか小さい女の子の相手をしたことがなかった木崎にとって、おどおどとなにかに脅えているAはどう接するのが正解なのかいまいち分からずにいた。境遇も境遇だ。強い言葉になり得る言葉を徹底的に排除する内にそれは、Aに対して保護な扱いに変化し、これが正解の接し方なのだと変な勘違いを始めていた。
「……あの子、14歳よ？幼稚園の子だと勘違いしてんの？」
「ふふ」
苦言を呈す小南。
そりゃそうだ。
木崎がAに包丁を持たせたのはつい最近のことである。恐らく、Aから自主的に手伝いがしたいなんて要望がなければ一生握らせることは無かっただろう。
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年6月6日 22時
