待ちぼうけのスターゲイザー / 2 ページ2
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どこを見渡しても薄暗く、嘘のように静まり返ったそこは、Aが知る駅ではなかった。随分と長い間放置されたであろう、その掠れた文字で綴られる「弓手町駅」という文字は、聞き覚えもない。
ここは、どこなのだ。
まるで都市伝説にでも遭遇したかのような出来事にAはネットで有名な異界駅を思い浮かべる。Aが知らないだけでこの「弓手町駅」も同じような異界駅なのではないか。異界駅と言えば、遠くで聞こえる祭囃子や、片足のない老人が線路の奥にいるとか、そんな話を聞くではないか。
湧き上がる想像力は全て悪い方向に回路を繋ぐ。膨れ上がる恐怖にAは足がすくみその場で腰を抜かしてしまった。そうしてこの後、身に起こることに無防備に身構えていたAの目の前に現れたのは、片足の老人でもなく、異形の物でもなく、青いジャケットを着た青年であったのだ。
「きみ近界民って訳でもないでしょ」
「ねい、ばー……」
「んーやっぱりそうだよねぇ」
草花が茂る線路に経つ青年は、特別恐ろしいモノを飼い慣らしてるようにも見えない。人の姿に化けてるとも思えない柔和な笑みを浮かべ、軽々とホームに飛び乗った青年は座り込んだままのAに視線を合わせるようしゃがんだ。
「ホントに女の子がいるなんて思わなかったよ」
「色んな未来があるね〜」と笑う青年に、Aは未だまともな返事が出来ずにいた。
Aにとっての日常はその日限りで終わりを告げ、彩りは全て塗り変わったのである。
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作者名:40 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年6月6日 22時