Day 32 ページ33
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「ちょうちょ助けないと可哀想だもん」
「蜘蛛のエサ逃がすの駄目だろっ」
自分の娘を見ているようでなんだか不思議な気分だった。意見を口に出さない、内気で何を考えているか分からない娘。それでも愛しかった、だって自分だから。小学生のときのわたしって誰かと話したことあったっけ、よく親に心配されていた気がする。
小学生らしい感情論で繰り広げられた討論。
ところでこの夢はいつ覚めてくれるのだろうかと裸足の指先に視線を俯かせていると懐かしいチャイムが天井のスピーカーから鳴ったから、ここだと思ってゆっくり瞬きをした。
「──……ん、」
覚めた？
わたし、あ、私。ああ起きた。私、どこ、いつ。
──……。
「あっ鈴屋さん、琴宮さん起きました！」
「起きました？ おはようですA〜」
「……鈴屋せんぱぃ」
隣、壁、水郎、半兵衛。前、鈴屋先輩、半井先輩、三幸くん。コンタクトが乾いてる、痛い。
きもちわるい、ここ車だ。
「Aがいた場所、薄い濃度で対人間用の催眠ガスが撒かれていました。特に怪我もしてなかったのでこのまま僕たちと送迎車に乗ったですよ」
前の座席から身を乗り出して状況を説明してくれた鈴屋先輩の両目は普段より腫れぼったくて、私を見つけたときにガスを吸って、私が起きる前に一眠りしていたのかと予想した。誰が運んでくれたんだろう、防護服着てるから重いよ。
「あの、私が殺した喰種って」
「ちゃんと処理されましたよ〜、僕たちのほうにいた子どもの二人も同じくです」
「そう、ですか」
そ、ならよかった。
あれ、なにがよかったんだろう。「無事に作戦成功して」よかったね？ 「同じところに逝かせてあげられて」よかったね？
「……あの、すみません」
ーー吐きそうです。
「あ……誰か酔い止め持ってませんか〜？」
「俺が」
「流石です半井〜」
……どっちなのか決められない。やっぱり自分の答えが出せない、マルかバツか分かんない。相変わらずわたし、浮いてる。
え……それでもよかったはずなのに。
「きもちわるい……」
「深呼吸するですよ」
「背中撫でますね琴宮さん」
「誰か水持ってないか──……」
嫌だな、怖いな。みんなはどっちなの。
私だけなの？ こんなに中途半端なの。
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作成日時：2020年7月5日 15時
