Day 11 ページ12
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えーとえーと、プリン買ったしウエットティッシュも買ったし……足りるよね。貯金箱普段から持ち歩いてて本当によかった。報告書もギリギリ間に合ったしおやつもこうして買えたし。でも明日から財布は持っておこう。
クソ暑……こほん。虫眼鏡で日光を一点に集めたみたいに凝縮された温度がジリジリと露出した首と手を焼いていく。皮膚が焦げて爛れていくような感覚を覚えて、日焼け止めを塗っておけばよかったと、真夏でもないくせにやたらと暑い今日を恨んだ。
CCGまであと50mほどといったところの距離でため息を吐きながら歩を進めていると、明らかに私の背後で鳴ったシャッター音とバタバタと焦るように近づいてきた足音。えぇ、私万引きなんてしてな「君、琴宮Aちゃんかい?」い……けど。
「あ……えっと。どちら様でしょうか……」
「琴宮Aちゃんだよね?」
先に訊ねるなら自分たちから名乗れや……。首に高そうなカメラを下げた男性が二人。もちろん私の顔見知りでもなんでもない。今日が初めましてこんにちはなのになんで私の名前を知ってるんだろう。プリンが温くなっちゃうけど……鞄の中に入ってるしまだ大丈夫かな。
「確かに私は琴宮Aですけど……えっと、誰」
「僕ら15区の出版社で働いててさ、就職した時から鳴耶の喰種事件について調べてるのね。そしたら当時の生徒がここの地区のCCG局で働いてるって情報をゲットしたから来てみたらこんなすぐに見つかったわけ。あの事件なんか生存者が少ないせいで状況聴取できなくてお蔵入りみたいになっちゃってるじゃん? だからこっち側で積極的に全貌を明らかにしていこうと思って! ということで話聞いていいかな?」
「え、嫌ですけど」
そっちか。もちろんこんな初対面に事件のことペラペラなんて話す気ないしCCGからも箝口令敷かれたからそもそも口に出せない。よりによってなんで私……? めんどくさ、
「……規則でお話できないことになっているので、すみません」
普段鈴屋先輩たちにすら見せないキラッキラの(愛想1000%)笑みで返すと彼らは「ありえない」を顔に出して抗議する。
「いやっ……だって、協力してくれたら取材料とかも払うよ! しかも誰も取り扱わない事件だから額とか高、」
「捜査中の妨害は喰種対策法により処罰が下されるのでこれ以上の干渉は御遠慮ください」
「い、の……に。え?」
え、誰?
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作成日時:2020年7月5日 15時