Cocktail [Zweite] -HSJ-

Monat ページ12

SIDE__Inoo


物心が付いたときには、1人だった。


でも、それが普通だと思っていた。

子供の間は孤児院で、職員と一緒に暮らす。
そして、18になったらそれぞれの国に戻って、職を見つけて暮らしていく。

でも、それは違うってことはすぐに分かった。


『慧くんって居るでしょ？あの子、気味悪いわよね。』
『冷たい目でね。何考えてるか分かんないのよね！』
『ね。親も愛情も、何も知らないからあんな風に育ったのよ。』


親。愛情。

それを知らないから、俺はあんな風に言われるのかな。
でも、それはもう知ることができないって分かってしまって。

なら、何もかもを知ってしまえばいいか。


親を知らなくても、愛情を知らなくても、知識があればきっと嫌われない。


そう信じて疑わなかったから、俺は今まで以上に熱心に勉強に打ち込むようになった。
運動なんてしない。遊びだって興味ない。

そんなの、勉強しない分時間を無駄にして、また嫌われる素を作るだけだから。

何も知らないせいで嫌われる。知れないものがあるのなら、それ以外を知ってしまえばそれでいい。
そう思っていたけど。


『慧くん、遊ばないの？』
『…俺は、嫌われないために知れることは全部知りたいの。』
『…それはちょっと違うかな。全部を知っていなくても、人の気持ちを分かってあげられたら、嫌われないと思う。僕はそう思うけど、違うかな？』


孤児院唯一の、男性職員。
この人だけは、俺にずっと優しくしてくれて、本当のことを教えてくれてた。

だからきっと、今回もこの人が言っていることは正しい。

だから俺は、嫌われないために、人の気持ちを理解することにした。


目線の動き、口調、声のトーン、表情の細かな変化。
それを見て、話を進めていく。

努力をすれば、すぐにできるようになった。

……できるようになったから、分かってしまった。



『大貴くんはキラキラしてるね。』
『そうでしょ？よく言われるんだぁ！！』
『うん。大貴君の笑顔、太陽みたいで大好き。』



太陽みたい？……違うよ。
大ちゃんは、心から笑ってない。



＿＿＿偽りの太陽なんだよ？

＊→←Sonne

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