30.ずっと前から ページ30
「……で、話って?」
『…………あ、あのね!』
夕日が差し込む、空き教室。
机を挟んだ奥にある黒板は、ほとんど使っていないからすごく綺麗だった。
頬が赤くなっているのが、自分でもわかる。
でもこの赤らみは、どうか、夕日のせいだと思ってほしい。
心臓がドクドクと、鳴りやまることをしらない。
『…………私、私っ、あ、天宮くんのことっ!……』
.
.
“「……Aは、Aは!……君が馬鹿にしていい人じゃない!」”
“「恋って、……本当残酷だよね」”
.
.
『す、好き…です…………!』
言い掛けた一瞬、真冬の言葉が脳裏に過る。
……でも、そんなことより、返事が怖かった。
私は目をぎゅっと瞑る。
“「……じゃあね、悔いのないよう、頑張って」”
.
「…………ごめんね」
顔をあげると、天宮くんは寂しそうな表情を浮かべてそう返事をする。
……あぁ、振られるって、こういうことなんだ。
心にグサッと、何かが刺さったみたいと、いろんな小説や漫画では描かれているけど、
そこまでダメージは食らわなかった。
……何故なんだろうか。
「……Aちゃん、君は本当に、僕のこと好き?」
『…………………えっ?』
突然、天宮くんの顔が視界一杯に広がる。
私の頬に天宮くんの暖かい手が触れ、熱を帯びさせる。
「……ねぇ、Aちゃん、君の好きな人は?」
『……え、いや、そんなの、天宮く……』
「嘘だね」
………………へ?
いつもにこにこと笑う天宮くんじゃない。
その鋭い目は、私を完全にとらえていた。
「……自分に嘘をついちゃダメだよ。ちゃんと自身の心に聞いてみて?」
…………ど、どういう……
“「A」”
“「……ふふっ、ゴリラは本当にゴリラだ」”
ふと、脳に真冬の笑う姿が映し出される。
真冬のことを、どうして今考えてしまったのだろうか。
“「まふゆくん!こんどがっこうきたら、わたしといっぱいあそぼーね!」”
“「…………うん!」”
初めてあったとき、手をとったら、笑ってくれた。
「…………真冬くん、でしょ?」
天宮くんは、私から手を離してまた笑顔を取り戻す。
…………私、
真冬のこと、ずっと前から、
好きだったんだ____
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つむぐ - やのさんの作品、どれも面白かったです!別垢になってもずっと応援してます!お疲れ様でした! (2020年8月11日 18時) (レス) id: 88b02305d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきか - 小説の最後の意味教えてほしいです (2019年10月27日 21時) (レス) id: f42ad21887 (このIDを非表示/違反報告)
ヽ(・∀・)やぁ - お久しぶりです。受験勉強で見れてないうちに...。新しい垢見つけたらコメントしますね!ずっとずっとやのさんの作品が大好きです! (2019年7月9日 6時) (レス) id: f277aaf274 (このIDを非表示/違反報告)
ここね(プロフ) - あなたの作品が大好きです!今回の作品も号泣させていただきましたw別アカになろうが必ず見つけ出します! (2019年6月16日 9時) (レス) id: f16806af0a (このIDを非表示/違反報告)
Rmd(プロフ) - 今作も遅くなりましたが、読ませて頂きました。最後のつっかえる感じがとても好きです。また、貴方の書く作品に出会えたら嬉しいなと思います。お疲れ様でした!!!(^^) (2019年5月5日 23時) (レス) id: 4a935f5230 (このIDを非表示/違反報告)
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