10.泥棒猫 ページ10
『……不登校らしいけど、久々の学校、どうだった?』
あれから午後の授業は過ぎ、下校時に通学路で私と一ノ瀬くんは雑談というものをしていた。
「……んー、……俺が行きやすいところではないかな。……でも、Aといられるなら、毎日でもいきたいよ」
『そ、それじゃあ!……』
体売るのもやめて、毎日私と学校に通ってくれる!?……
そう思ったが、そんな期待はすぐに打ち破られた。
「……でも、俺まだ来月までバイトが一杯たまっててさ、学業に専念できるほど余裕ないんだ」
…そんなぁ、…………。
バイトって、……また殴られたり蹴られたりするのでしょ?
もう見てられないよ……。
「……ふっ、見てられないって顔してる」
一ノ瀬くんは私の頬に、少し冷たくなった両手を優しく触れさせる。
冷たいのに、なんだか心はポカポカと暖まってきたのだ。
そんなドキドキした中、一ノ瀬くんは少しニヤリと笑ってこう告げた。
「……泥棒猫に盗られないでね」
『……泥棒、猫?…………』
「……ふふっ、じゃあね」
私が目を丸くしている間も、一ノ瀬くんはクスッと笑って手を振り、近くの路地裏の方へ駆けていった。
……あ、いっちゃうんだ……。
“泥棒猫”よりも、一ノ瀬くんがまた傷つくのが苦しかった。
……仕方ない、私は一ノ瀬くんがまた怪我をしていたら手当てをしてあげよう。
……でも、泥棒猫って……?ヤバイ、バカなのばれてまうわ!!
え?もうばれとる?……そんなばなな!!
『…………とほほ、』
そう呟きながら、俯いてふらふらと歩いているときだった。
.
「ニャア〜!」
「……はいはい、煮干しですよ〜」
.
路地裏で野良猫に煮干しをあげている!?!?
見えたのは、背が高く、私と同じ制服を着ている男子の背中。その前には猫が嬉しそうに鳴いて、煮干しを受け取っていた。
……え、なんなの!?路地裏でなんかすんの今流行ってんの!?!?
「いい子ですねー!」
「ナァ!」
でも地味に野良猫かわいい!!ほんとに野良猫!?!?
……え、話しかけた方がいいかな!?
でもでも、こういうときって邪魔しちゃいけないよね!?
……そう焦っていると、
「シャアァァァァ!!」
ひぃぃいいいいいい!!!
猫は私をみて、威嚇をして来たのだ。
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ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2019年10月24日 0時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
はなね - 貧欲ではなく貪欲では? (2019年10月22日 14時) (レス) id: ea485f4be1 (このIDを非表示/違反報告)
やの(プロフ) - 愛香さん» ありがとうございますううううう!!!!はい!天界から降臨したエンジェルボイスを持つ天使さんの予定です!!はい!頑張ります! (2019年4月18日 20時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
やの(プロフ) - layuさん» ありがとうございますううううう!!!!今回はそらまふを少し意識いたしました!……(`;ω;´)……わかりました!ご要望とあらば書かせていただきます!しかし主の心の体調ややる気具合で変わってくるので、更新されなかったら諦めたと思ってくださいw (2019年4月18日 20時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
愛香(プロフ) - 今回も面白かったです!次は……どこぞのバーコードさんですかね?待ってます!頑張って下さい! (2019年4月18日 20時) (レス) id: 02509c761b (このIDを非表示/違反報告)
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