27.修羅場 ページ27
『……ぷはっ!』
……最悪。……ファーストキス、好きでもない彼方先輩に奪われちゃった……。
やっと唇が離れ、私は目尻に涙をためているが、彼方先輩は相川さんの方を見ていた。
「……あぁ、真冬、来るのがあと少し早かったらファーストキス奪われずにすんだのにね?」
ニヤリと笑う彼方先輩だが、相川さんは目を丸くして、硬直していた。
……最低!こいつ最低!私のファーストキスを奪ったあげく、イケメン後輩まで苦しめるなんて!
バタンッ、と、相川さんが抱えていた日誌は落とされ、床に惨めに倒れる。
『あ、相川さッ!これは!……』
「……いいんだ。別に。……」
『………………え?』
私は必死に説得しようとするも、相川さんは低い声で冷たい言葉をいい放つ。
そしてしゃがみ、日誌を拾い上げると、光のない目で私を見た。
「彼方先輩が女遊びが激しいのは昔から知ってる。
……それに、いつかAちゃんも狙われるんだろうのって予想はしてたよ」
「ふふっ、なら保健室送りにしないようにした方がよかったね」
「……そう、ですね。」
見れば見るほど、相川さんから痛々しいと感じられるような寂しさを感じる。
……やだ、そんな顔してほしいんじゃない。
違う。また、また大切な人を失いたくない。
棗とだって、まだ和解できてないんだよ?
こんな、このままじゃ、……私は本当に、最低な人間になってしまう。
『……相川さん、ごめんなさい!』
「…………え?」
『……その、えと、抵抗、できなくて、……』
「……もう過ぎたことはいいよ。……今日も、僕が日誌かいてくるね」
相川さんはこれっぽっちも嬉しそうな雰囲気を出さずに笑い、保健室を去っていった。
……あぁ、最悪だ、……。
『……うっ、……も、やだぁっ、……』
私の頬には、何度も何度も滴が垂れていく。
ふいてもふいても、それが収まることはなかった。
「……ふふっ、大丈夫だよ。」
『……………………へ?』
「……じゃじゃーん。」
彼方先輩はそう笑うと、自分の唇から何かを剥がすようなそぶりを見せる。
するとラップのような透明なシールみたいなのが彼方先輩の唇から離れた
「俺、キスはあんま好きじゃないんだぁ。だから君のファーストキスは奪われてないよ」
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ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2019年9月24日 17時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話もっと読みたい! 終わって欲しくない(´;ω;`)あとそらるさん(彼方先輩)今は夢主ちゃんのこと、どう思ってるんだろう…?とても気になる…!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
やの(プロフ) - 夜空(主にDS)さん» できれば気づかないでほしかったぞwwww違うよ、やのんはいじる役だよ((((((((( (2019年4月1日 22時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(主にDS)(プロフ) - やのさん» ごめんなー(棒)ちょっと嬉しい気持ちがあったんだわ(^^)恥ずかしいんだね〜一生使えるネタが出来たw(嘘です)やのんは、いじられ役だね(( (2019年4月1日 22時) (レス) id: 1e511e327c (このIDを非表示/違反報告)
やの(プロフ) - 夜空(主にDS)さん» 毎度のごとく長文のコメントありがとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!( ;∀;)うん!更新頑張るね!ちょっwwwほめてくれるのはうれしいけど、恥ずかしいからそこには触れないでwwww (2019年4月1日 22時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
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