もういちど ページ34
-カラ松
彼女の一言が、ズサリと心臓に突き刺さる。
さっきとは違う胸の騒めきに、つかえるような息苦しさに顔を歪めて彼女から目をそらすけれど、彼女がそれを許さずに「ねぇ、教えて?嫌い?」と俺に問いかけ続ける。
_____嫌いじゃない。好きだ。
その一言が言いたいのに、彼女を傷つけた俺がそんなことを言ってもいい資格があるのかと思い留まって口をつぐむ。
黙る俺を見かねて、彼女の方が口を開いた。
「私ね、自分の気持ちを抑えてた。自分だけ幸せなんかなるんじゃなかったって、ずっと思ってた。……だから、カラ松と別れようって決めた」
「……」
「決めたつもり、だったんだけど…ね。…やっぱり無理みたい」
「私、カラ松のこと好きだよ」
言いたかった言葉が彼女の方から聞こえて驚きに顔をあげれば、彼女が俺の胸に飛び込んできた。
「私のこと、嫌いじゃないならちゃんと言って?」
「!」
「……好き、なんでしょ?」
あの日、俺と二美が結ばれた日に言った言葉が再び繰り返される。
嬉しさでこぼれそうな涙をこらえながら俺は彼女を優しく抱きしめた。
「好きだ。二美」
.
「そういえば、さっき願掛けじゃなくて謝りにきたって言ってたけど、なにを謝ったんだ?」
「…私、ここでカラ松に「ずっとそばにいる」って言ったでしょ?その約束、破っちゃったから」
カランカランと彼女が投げたお賽銭が音を立てて落ちる。
「んー…それは違うんじゃないか?」
「え?」
「あんな事になってしまったが、俺はずっと二美の事を想っていた。…二美もそうじゃないのか?」
「そ、そうだけど…」
「二人の想いがずっと側にいたなら、いいじゃないか」
俺の投げた小銭も音をたてて落ちていき、二人で手を合わせる。
「それじゃ、改めて願掛けだな。二美、今度は自分のことを願い事するんだぞ」
「分かってるって」
『ずっと二人一緒にいれますように』
重なった声に二人顔を見合わせて笑えば、ガサリと遠くの木の陰から音がした。
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唯月 - 永久保存でお願いします(*^_^*) (2019年4月27日 19時) (レス) id: 0fc20caa15 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - その後のお話が読みたい! (2017年8月21日 18時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - かや梅さん» ありがとうございます!何回も最初から読んでくれたなんて本当嬉しいです…!ありがとうございます!番外編は考えていませんが、新作を準備していますので、もうしばらくお待ちください◎長い間読んでいただき、本当にありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - ミサキ@さん» ありがとうございます!そう言ってもらえて凄く嬉しいです!!続きは考えていないのですが、新しい作品を準備中なので、そちらを楽しみに待っいてください(^^)再度読んで頂けるなんて…本当にありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - 椿姫さん» コメントありがとうございます!無事に完結できました。その言葉が本当に嬉しいです。書いた甲斐がありました。長編でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M | 作成日時:2017年1月7日 14時