夢か現実か ページ33
-カラ松
「いきなりすぎるだろあれは…」
ぴしゃりと閉められた玄関を背にポツリとつぶやく。
とはいえ負けてしまったのは自分で。コンビニに向かって歩き出すと、ふわりと懐かしい記憶が胸をかすめる。
(いつもあの電柱の下で待ち合わせてたんだよな)
二つ目の角を曲がって、二つ目の電柱。
お互いに二番目だから分りやすいねって笑いながら彼女が決めた待ち合わせ場所。
もうそんなことをする日は来ないんだろうな、とぼんやり考えながら二つ目の角をまがると、一人の女の子が立っていて思わずドキッと心臓が跳ねた。
まさか。そんなことないはず。
急激にあがる体温を感じながらゆっくりと近づいていく。
一つ目の電柱を超えたとき、気づいたように女の子が振り返ってこっちを見た。
「遅いよ。カラ松」
「二美…?」
「じゃあ、行こっか」
「え?」
立っていたのは間違いなく俺の好きな二美で、はにかみながら俺を見上げる。
頭がついていけずに固まる俺の手を彼女がきゅっと優しく握ると、胸の鼓動がまた激しく騒ぎ出した。
ふわふわとする頭と足取りで手をひかれるまま彼女と歩き出す。
これは夢なのか、と思ってしまうような今の状況を手から伝わる体温と柔らかさが否定すもんだから間違いない。現実だ。
見ていいのかどうか迷うほど緊張している俺はちらりと横目で彼女を見れば、視線に気づいた彼女が眼鏡ごしに俺を見上げて困ったように眉を下げた。
「…ごめんね。びっくりしてるよね」
「え、い、や…」
「いいの。そのまま何も喋らなくていいよ。…ただ、一緒についてきてほしい」
「…ちょっとだけ、付き合って」と苦笑いで言う彼女に「わ、分かった…」と半ば押し切られた俺はそのまま彼女と歩幅を合わせた。
「ここか…?」
「うん。ずっと来たかったの」
たどり着いたのはいつか二人で願いをかけた神社で、二美はまっすぐ歩きだして手を合わせた。
「…よし」
「…何をお願いしたんだ?」
それくらいは聞いてもいいだろうかと少し慎重に尋ねれば、「ううん。…お願いじゃなくて、謝りにきたの」と彼女が振り返る。
そして俺の方まで歩いてくると、緊張したように息をひとつついた。
「ねぇカラ松」
「なんだ…?」
「………私のこと、嫌い?」
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唯月 - 永久保存でお願いします(*^_^*) (2019年4月27日 19時) (レス) id: 0fc20caa15 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - その後のお話が読みたい! (2017年8月21日 18時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - かや梅さん» ありがとうございます!何回も最初から読んでくれたなんて本当嬉しいです…!ありがとうございます!番外編は考えていませんが、新作を準備していますので、もうしばらくお待ちください◎長い間読んでいただき、本当にありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - ミサキ@さん» ありがとうございます!そう言ってもらえて凄く嬉しいです!!続きは考えていないのですが、新しい作品を準備中なので、そちらを楽しみに待っいてください(^^)再度読んで頂けるなんて…本当にありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - 椿姫さん» コメントありがとうございます!無事に完結できました。その言葉が本当に嬉しいです。書いた甲斐がありました。長編でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M | 作成日時:2017年1月7日 14時