今川焼 ページ25
-チョロ松
「あっあのさ!お腹…空いてない?」
彼女をあのまま見続けていたらまたしても理性が崩壊しかねないので、持っていた小さな紙袋を三美ちゃんの前でぶら下げる。
「おそ松兄さんに買ってきてって頼まれたんだけどさ、今川焼なんだけど」
「今川焼…」
「ここのは特別美味しくて…あっでも三美ちゃんあんこ好きだっけ?もしかして嫌いだったり?!うわぁ…ごめんあんこしか買ってきてないや…カスタードのやつも買ってこればよかった何やってんだ僕まじごめん……」
沈黙が恐くてとりあえず早口で喋り散らすチキンな僕を、三美ちゃんはしばらくきょとんと見つめていると、とたんにくすくす笑いだして「あんこ好きだから。落ち着きなよ」と僕の手から紙袋をとった。
「お茶いれるから。座ってて」
「え、あ、うん。ありがと…」
給湯室に消えていく彼女の後ろ姿を見送り、ぎしっと椅子に深く座りふぅとひとつ息をつくと机の上が片付いているのに気がついた。
散乱気味だった卓上の書類は綺麗にファイルされ日付通りに並べられていて、窓枠の埃や床もきれいに掃除が行き届いていて。
僕がいない間やってくれたのを思うと、胸の奥がきゅっとつまった。
(……ひとりにさせちゃってたな)
しばらく部屋をぼんやりと見渡していると「お待たせ。熱いから気をつけて」と三美ちゃんがお盆に湯呑みを2つ乗せて戻ってきた。
「それじゃ、いただきます」
「……」
「…食べないの?」
「え?!あっ食べる食べる」
ぼーっとしていて彼女が手を合わせているのも気づかなくて、慌てて今川焼をひとつ掴んで大きめに頬張ると、案の定盛大にむせた。
げほげほと咳き込む僕を見て「だっ大丈夫?!」と急いで背中を擦ってくれる三美ちゃんが「お茶で流しなよ」と湯呑みをくれる。
「けほっ……あ、ありがと」
「あんな急いで食べたらむせるに決まってるでしょ」
「口ん中水分全部持ってかれた…」
「当たり前じゃん」
「死ぬかと思った…」
「……ねぇ」
「ん?」
「……もしかして緊張してる?」
「え?」
今川焼を食べる手をとめた三美ちゃんが、不安そうな目を僕に向けてきて思わずぴくっと顔がひきつった。
やばい。無理して振る舞ってるのがバレてる。
どうにか冷静になろうとうるさい心臓をなだめながら「べ、別にそんな…」と作り笑いを浮かべていたら
「……そんなにあたしといるの嫌?」と彼女が泣きだした。
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唯月 - 永久保存でお願いします(*^_^*) (2019年4月27日 19時) (レス) id: 0fc20caa15 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - その後のお話が読みたい! (2017年8月21日 18時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - かや梅さん» ありがとうございます!何回も最初から読んでくれたなんて本当嬉しいです…!ありがとうございます!番外編は考えていませんが、新作を準備していますので、もうしばらくお待ちください◎長い間読んでいただき、本当にありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - ミサキ@さん» ありがとうございます!そう言ってもらえて凄く嬉しいです!!続きは考えていないのですが、新しい作品を準備中なので、そちらを楽しみに待っいてください(^^)再度読んで頂けるなんて…本当にありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - 椿姫さん» コメントありがとうございます!無事に完結できました。その言葉が本当に嬉しいです。書いた甲斐がありました。長編でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M | 作成日時:2017年1月7日 14時