もう遅い ページ2
-五美
___あいつの想っている子は、君だけだから。
タクシーを待っている間、泣いていた理由を聞いてくれたあつしさんは笑ってそう言ってくれた。
何も心配しなくていい、あいつは一途だからって。
私だってそう信じたい。
(……でも、どうして?)
他の子に『好き』なんて言ったの?
『……好き…です』
「もう聞きたくないのに……」
もう忘れようと、気にしないようにしていても、ふっと気を抜くとまたあの言葉が何度も頭の中で繰り返されてしまう。
(私がいつまでも過去を引きずっていたから、他の子に目移りしたのかな……)
どれだけ想いを伝えても、相手から気持ちが返ってこない恋愛なんて諦めるのが普通で
十四松さんもきっとそれを選んだんだ。
(……今さら十四松さんの気持ちを手にいれたいなんて、もう遅すぎる)
あれだけの彼の真剣な気持ちをもらっておきながら
私はそれを壊してしまうのが怖くて受け取れなかった。
それなのに別の人へその想いが渡った途端、冷静でいられなくなるほど胸が苦しくなるなんて思ってもみなかった。
(こんな気持ちになるくらい、十四松さんの事が好きになってたんだ…)
ハイタッチの時触れた手と手も
何度も撫でてくれた頬や頭も
いつも優しく包んでくれた彼の温もりは
今じゃ欲しくても手にいれられなくなってしまった。
「……私も諦めよう」
まだ熱が残る彼への気持ちを無理矢理胸の奥にしまいこんで、こぼれそうな涙をまぎらわそうと窓の外へ目を向けた。
タクシーの窓から外を眺めればもう真っ暗で、町の灯りが暗闇にぽつぽつとと浮かぶ。
(赤塚スーパーだ。もうすぐお家………え?)
近所の赤塚スーパーの看板が見えて、そろそろ降りる頃だと思っていたら
店の前を勢いよく駆けていく黄色が見えた。
慌てて財布からお金を取り出して運転席へ手を伸ばし、「運転手さん!ここで降ろしてください!!」と私は急いでタクシーから降りて来た道を振り返った。
見えた黄色はツナギの色で、その人は誰かを探しているように辺りを見回していた。
「十四松さん!!」
少し離れた距離だったけれど、その声は彼に届いたようで
振り返ったその人は、顔を確かめるようにゆっくりと私の方へ近づいてきた。
「……五美ちゃん…?」
よろよろとした足取りで私の所へ来た十四松さんはぽすっと私に倒れこむと
「……良かった」と小さく呟き、そっと私を抱き締めた。
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唯月 - 永久保存でお願いします(*^_^*) (2019年4月27日 19時) (レス) id: 0fc20caa15 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - その後のお話が読みたい! (2017年8月21日 18時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - かや梅さん» ありがとうございます!何回も最初から読んでくれたなんて本当嬉しいです…!ありがとうございます!番外編は考えていませんが、新作を準備していますので、もうしばらくお待ちください◎長い間読んでいただき、本当にありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - ミサキ@さん» ありがとうございます!そう言ってもらえて凄く嬉しいです!!続きは考えていないのですが、新しい作品を準備中なので、そちらを楽しみに待っいてください(^^)再度読んで頂けるなんて…本当にありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - 椿姫さん» コメントありがとうございます!無事に完結できました。その言葉が本当に嬉しいです。書いた甲斐がありました。長編でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M | 作成日時:2017年1月7日 14時