第四話【撤退の鐘】 ページ5
『あー、もしもし、聞こえるかい?』
「!……歌仙か?主は?」
『主は泣きながら君たちの帰りを待っ』
『泣いてない!!』
良かった。どうやら主は元気なようだ
全員で顔を見合わせ、ホッとした。あの静寂の後、色々と話し合っていたが歌仙が出てくれるのは助かったものだ。何より俺は主を怒らせてしまった主犯格でもある訳だろう…なかなか無理難題なところがある
『とにかく、今は撤退しようか。主は主なりに反省しているし、そこの政府の人にも謝りたいと言っているよ』
『謝りたくない!そんなの一言も』
『言っていたよね?』
『言ってました。謝ります』
……流石初期刀と言ったところか。主の扱いに慣れを感じる
謎の男を見やれば、不服そうにため息をついた。この現状がどうにかなればどうにでもなれという感じだろうか
「では、これより撤退とする」
耳元の通信機のボタンをひとつ押すと、目の前に地図と操作パネルが展開され、それをスライドすると【撤退】という文字が映し出される
それを押すと青い光が我が身を包み込み、目の前を真っ白に染め上げた____
再度目を開くと、本丸が見えたが、それよりも歌仙の後ろに隠れている人物がヒクヒクと震えているのが目に入った。どう見ても主だ
「歌仙、一体主に何を__」
「ちょっと叱っただけだよ」
この状況は既視感があった。あの日、主が失踪から帰ってきて歌仙に別室に連れてかれた後、まさにこの状況で帰ってきた気がする
「主、あの…」
「…………い」
微かに聞こえた、主の震えた声。俺がゆっくり歩み寄って、下を向いている主に目線を合わせようと膝をついてのぞき込んでみる
__顔を真っ赤にして、涙を流す主と目が合った
すると、それを隠すように、主は俺に抱きついてきた。心臓が飛び跳ねた。主に仕えてはや三年。こんな事をされたのは初めてで、抱き返す両腕が動きを止めた
「ごめんなさい」
耳元ではっきり聞こえた声に、まるで子供のようだなと思いつつ、俺は優しく抱きしめ返した
「いいえ、俺こそ出陣する前に主を止めれば良かったのです。あの場になって発言するのは間違いでした」
「はしぇべぇ…」
主に更に強く抱きしめられる。ヒラヒラと舞う桜の花びら。これを自らが出している桜だと認識して、抑えようとしたがそんな場合じゃない状況だった
これが、幸せ……。恐悦至極……。
「きみ、僕には無いのかい?」
「あのゴリラ嫌い」
この後、無理矢理歌仙に抱きつかされたのは言うまでもない
80人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:絶望少女 | 作成日時:2018年11月17日 22時