【◇】 年上のカレ、誘惑中。

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『あ、あのっ……！』

「……」







私の呼びかけに反応せずにどんどん歩いて行く






けど、掴まれてる腕は痛くない






こういうとこは彼らしい優しさなんだと思う







『倉持先輩！どこ行くんですか！』

「……」

『倉持先ぱ、っわ！』







グイッと腕を引かれ、


気づけば背中が壁についていた





驚いて顔を上げると同時に、



顔の横に倉持先輩の手がつく







はっ！これが噂の壁ドン！





って、ときめいてる場合じゃない









「………さっき、御幸となに話してたんだよ」

『えっ？』








なに、と言われても………







あなたをムラムラさせる作戦です







なんて言えるわけないし………







ていうか先輩







…………怒ってる？








『た、ただの昔話です』

「…………あ、そ」








「ならいいんだけどよ」と納得いかない顔で
倉持先輩が離れる







私、何かしたのかな




もしかして誘惑作戦ばれちゃった？





いやいや、それはない……はず……








『あの……先輩、怒ってます？』

「んなっ！お、怒ってねーよ！」

『えっ？怒ってないんですか？』

「あ、いや、怒ってるっつーか……」







「……あーもー……」と決まり悪そうに
私から視線を逸らし、頭を掻く





そんな先輩を他所に、





私の不安は深まるばかりで








「っ……とにかく、怒ってねぇから」








「心配すんな」と頭を撫でて練習に
戻って行った






怒ってないならそれでいいんだけど………





いや、あれは絶対怒ってたでしょ………









『うーん………分かんない』








先輩の心が






全く読めません………








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