三十六話目 ページ38
リーダーの事なら、リーダーに変わった方が良いけれど、生憎彼は料理中だ。
“ああ、別にいいんだ。様が有るのは志木くんだから”
「? おれに何か?」
“いやぁ、あのちびっ子マフィアと喧嘩になってないかなぁって。それだけ”
ちびっ子マフィア……マフィア……ちびっ子……リーダーか。
何時もは蛞蝓とかなら聴いているから判ら無かった。
「リーダーとは喧嘩してませんよ。報告書の書類作成が有るので切っていいですか」
“待って待って。何人かから伝言を預かっているんだ。
乱歩さんは『お土産買ってきてね』
敦くんは『早めに帰ってきてください』
国木田くんは『帰ったら沢山仕事を出すからな』って”
「あれだけじゃないんですか。乱歩さんにはそのつもりです、中島さんには仕事が終わったら帰ります、国木田さんにはご迷惑おかけしますと伝えておいて下さい。では」
それだけ、と言っていたのにリーダーのことだけでないのはどうかと思う。
まぁ彼は息をするように嘘を吐くから嘘を吐くなというのは諦めているが。
幾ら言ったって聞きやしない。寧ろ増えている気すらする。
「もどりましたー……」
扉を開ける。
料理中に香るいい匂いが鼻腔を擽る。
匂いからしてハンバーグだろう。
子供もいるからか、子供受けするメニューだ。
何かを切っている音と、焼いている音。
ハンバーグと一緒に出す付け合せでも作っているのだろう。
ガチャ、ばたん。
冷蔵庫を開けて閉じる。
約束のゼリーを入れたのだろうか。
料理は見た目や味を楽しむばかりでなく、料理中の音や匂いまで楽しめる所は良いところだと思う。
五感すべてを使い、咀嚼音などを楽しむのは他にも少ししかない。
「食べる時どうするのよ。さっきはほら、膝に乗せるで済んでたけど、食べるのはそうも行かないでしょ?」
「確かに。どうしましょう?」
先刻は何も無かったから座れたわけで、前に物が有って、其れを食べるのであれば話は別だ。
詰めてもらうのは申し訳無い気がする。
かと言ってベッドの上や床の上で食べればリーダーに怒られそうだし。
二人で頭を抱えて唸る。
しかし一向にいい考えは出て来ない。
「戻ってるぞ」
「ほんまや。ゆうて此れ慣れてもうたから簡単に治るもんやないで」
口調が戻っていた事に気付いた真希が教えて呉れる。
「いつから敬語を使って話してるのよ?」
「そりゃあ三歳の後半から?」
今でも鮮明に憶えているなぁ。
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