閑話其の肆:白麗ノ幼子 ページ8
ちゅん、と窓の外で雀が鳴く。読んでいた御伽草子の絵巻から顔を上げたラウールの、少し薄い色素の目が太陽に透けた。
昼下がり、飽和した暖かい空気の室内に、ぽつんと一人座っていたラウールは、ぼうっと天井を眺めると、暫くしてごろん、と寝転んだ。
ラウ(…おるすばん、ひまだなぁ…)
依頼に行っている、照を除いた妖達が帰ってくるまではもう暫く時間がかかるだろう。先程までずっと家にいた照と辰哉も、急用がある、と言って行ってしまった。残されたのは、ラウール一人。
やたらと過保護な二人は、ラウールを一人にするのに随分躊躇っていたが、どうやら仕事の方も辰哉だけでは辛い仕事のようで、照は行くと言って聞かなかった。ラウールが｢僕るすばんする！｣と言うと、とことん甘い両親替わりの二人は、心配そうに頷いた。
辰哉や亮平がくれた絵巻物を読むのもこれで何度目かである。本をよむのはきらいじゃないけど、早く遊びたいな、早くかえってこないかな、と呟いてみるが、いつも嬉々として遊んでくれる蓮や康二、佐久間がいないのだ。全くもってひまだった。
いっその事ねちゃおうかな、と寝返りをうつと、窓から射し込む陽光が当たって、顔をしかめる。白銀色の髪が、さらり、と床に落ちた。
寺子屋にいけば、だれか友達がいるかな、でも辰哉にぃと照にぃにお外でるなって言われたしなぁ…とぼんやり揺れる木を眺めていると、矢張り、眠気が襲ってきた。
思わずうとうと、としていると、がらがら、と玄関から音がする。
玄関に背を向けていたラウールは、兄たちの誰かが帰ってきたのかな、と目を輝かせ、起き上がる。然し、そこに立っていたのは、見覚えのあるどの色でも無かった。
ラウ｢っおかえ、り…?、おにいさん、だれ…？｣
くすんだ橙色のぼろぼろの着流し。ぐしゃぐしゃとかき混ぜられた髪の毛は、色々な葉っぱや枯れ草が付いていた。
そして何より、ラウールを見つめる顔は、奇妙な愉悦と喜びに満ちていて。
｢…みぃつけた、君がラウール君？｣
ラウ｢僕、ラウールだけど…おにいさん、だれ？お兄ちゃんたちにおねがいなら、お兄ちゃん達はまだ…！｣
ラウールが言い終わるのを待たずに近寄ってきた男は、ラウールに触れると、軽々と其の痩身を抱き上げ、担いだ。
ラウ｢っ、ねえ！やだ、離して！｣
｢…ちょっと静かにしててもらえる？｣
ラウ｢…！ふぐっ、んー！んーんー！｣
一度抱え直した男は、手早く猿轡を噛ませると、ニヤリと笑い、家を出た。
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あゆ(プロフ) - 定期的に読み直しさせて頂いてるのですが、めめこじが好きなので橙玉ト虚空ノ暗黒の続きも楽しみにしています！無理のない範囲でいつか更新して下さったら嬉しいです。 (2021年10月23日 11時) (
レス) @page14 id: 6ef3ec4d5d (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - あゆさん» あゆさん、コメントありがとうございます！読み返して頂けるだけでもありがたいのに、定期的になんて…作者冥利につきます！これからもどうぞよろしくお願いします！ (2021年10月8日 7時) (レス) id: bc0aa38375 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - ユウさん» ユウさん、コメントありがとうございます！そう言っていただけると嬉しいです…！ゆっくりですが、楽しみにしていただけるのなら頑張りますね！ (2021年10月8日 7時) (レス) id: bc0aa38375 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - 千夜さん» 千夜さん、コメントありがとうございます！待ってていただけたなんて嬉しい限りです…！少しずつですが更新するので、よろしくお願いします！ (2021年10月8日 7時) (レス) id: bc0aa38375 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - 定期的に読み返していたので更新嬉しいです！一気にでも1話ずつでも、無理のないペースでの更新お待ちしております〜！ (2021年10月8日 1時) (レス) @page15 id: 6ef3ec4d5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：莉月 | 作成日時：2021年3月7日 9時
