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辰「っ照!…っえ、な、なにここ…!」

中庭に続く襖を勢いよく開いた辰哉の目に映ったのは、やけに広い中庭を取り囲み、驚いたようにこちらを見る烏天狗達。そして、中心で唯一此方を見ない大柄な仮面の男と、まるで西洋の絵画のように磔にされ、項垂れている照。男の手は、ゆっくりと照に伸ばされていた。

「…おや、これまた随分と早いお目見えだな。」
翔「っ彼奴、照に何しやがった…!」
涼「…それは分かんないけど、取り敢えずまだ息はあるみたい。」
佐「『妖変化・猫又』…って、え?…変化、使えない?!」

蓮「…烏天狗の妖術かも。俺も変化できない。」
康「うわ、結界も使えへんやん!」
辰「っ妖術使えないって、そんなの…!」

その言葉を聞いて冷笑した男が、少し下げた手を愈々(いよいよ)照の頭にふっ、と触れさせる。そして、横を見ぬまま、嘲笑うように口を開いた。

「…儀式の邪魔だ。お帰り願え。」

その言葉に、一斉に烏天狗達が武器を取る。然し、次の瞬間、飛びかかった烏天狗が一瞬にして地に落ちた。

辰「…照から手ぇ離せよ。」
佐「生憎、妖術無しで呆気なくやられる程やわじゃねぇんだよなぁ!」
翔「容赦するつもりは更々ねぇ、全力でかかってこいやァ!」
涼「悪いけど、手加減なんて生易しいことは出来ないから。…死ぬ気でかかってこい。」
蓮「喧嘩売る相手間違ったな。…ぶっ潰す。」
康「…仲間に手ぇ出したんやもん、塵一つ残したらんからな。」

膨大な殺気にあてられて、思わずぴたり、と動けなくなった烏天狗たちに、妖しくも美しい、純粋な殺気が襲いかかる。片や己の脚と拳、片や手にした日本刀が美しく閃いて、瞬く間にならず者達を瓦解させていった。

男は、忌々しそうに伸ばした手を引くと、ばっ、と六人の方へ向けて呟いた。

「…ちっ、小賢しい……っ、な、?!」
亮「小賢しいのはどっちでしょうね?」

想像していた妖力が放出されなかったことに驚愕したのか、目を見開いた男の背後、それも『頭上』から声が響く。振り向いた先、ゆっくりと降りたのは、紅色の目をとびきりの怒色に染めた烏天狗の姿。但し、その怒りは、正しく男に向いていたのだが。

「きっ、さま…!何をしおった!」
亮「…貴方と同じ事を。照が攫われた、と聞いた時から、頭の端にあった違和感の正体がやっと解けましたよ。…勝手な事情でうちの仲間に手ぇ出すんじゃねえよ。」

闇に光る幾つもの紅色に、恐怖からか、憎しみからか、男の喉が可笑しな音を立てた。

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あゆ(プロフ) - 定期的に読み直しさせて頂いてるのですが、めめこじが好きなので橙玉ト虚空ノ暗黒の続きも楽しみにしています!無理のない範囲でいつか更新して下さったら嬉しいです。 (2021年10月23日 11時) (レス) @page14 id: 6ef3ec4d5d (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - あゆさん» あゆさん、コメントありがとうございます!読み返して頂けるだけでもありがたいのに、定期的になんて…作者冥利につきます!これからもどうぞよろしくお願いします! (2021年10月8日 7時) (レス) id: bc0aa38375 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - ユウさん» ユウさん、コメントありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです…!ゆっくりですが、楽しみにしていただけるのなら頑張りますね! (2021年10月8日 7時) (レス) id: bc0aa38375 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - 千夜さん» 千夜さん、コメントありがとうございます!待ってていただけたなんて嬉しい限りです…!少しずつですが更新するので、よろしくお願いします! (2021年10月8日 7時) (レス) id: bc0aa38375 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - 定期的に読み返していたので更新嬉しいです!一気にでも1話ずつでも、無理のないペースでの更新お待ちしております〜! (2021年10月8日 1時) (レス) @page15 id: 6ef3ec4d5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:莉月 | 作成日時:2021年3月7日 9時

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