第十二篇 鼠狩り ページ12
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カツン、カツンと靴の音が響く。
徳富が扉を開けると、其処には吐血して蹲っている芥川の姿があった。
『又、太宰の訓練?』
「……いえ。僕が、太宰さんの計画を潰してしまったが故」
『……嗚呼、あの罠のやつね』
芥川に近付いて行く徳富。
そして氷嚢を取り出すと、芥川の鼻にそっと当てた。
『鼻殴られるのって何だかんだ云って一番痛いよね。太宰のスパルタ教育も程々にして欲しいもんだよ』
「……僕が、百年経っても勝てない相手が居るそうです」
芥川が忌々しげに吐き捨てる。
「織田……作之助」
『え、彼奴が?』
徳富はきょとんとした後、顎に手を当てて考えた。
暫くして、『……確かにそうかも』と呟く。
「矢張り、有り得ない……!!」
『でも良かったじゃん。伸び代しか無いって事で』
「くっ……」
徳富は微笑みながら芥川を見た。
『ホント素直で善いな〜。太宰の部下なんて勿体無いよ』
「僕は、僕は……太宰さんに一刻も早く認められなければ」
『凄い一途……ん?』
徳富の携帯が鳴った。
画面を開くと、太宰からの電話。
『太宰だ』
「太宰さんっ……」
ピッ、と通話釦を押す。
『もしもし、』
〈蘆花、敵のアジトが判った〉
『如何やったの?敵は多分芥川君が殺しちゃったんでしょう』
〈靴の裏に付いていた広葉樹の葉っぱから特定できた。今織田作を向かわせてる〉
『そう。じゃあ、一応治療の準備しとくね』
徳富は電話を切ると、芥川に向き直った。
『私一寸医務室行ってくる。芥川も傷ちゃんと処置した方が善いから着いて来なよ』
「……否、大丈夫です」
『そっか、判った』
屈んでいた徳富は『よいしょ』と立ち上がると、扉に向かって歩き始めた。
すると突然立ち止まり、芥川の方を振り返る。
芥川は一つ瞬きをして徳富を見つめた。
『一つ云っておくと、太宰は期待してない人にはそんなに厳しくないから』
「……!!」
『私が偉そうに云える事じゃないけど、頑張って』
徳富は少し微笑むと、扉を開けて部屋を出て行った。
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こめこめコメダ(プロフ) - てかみそさん» 仕方ねぇ続けるべ☆いぇい☆ (2022年12月22日 14時) (レス) id: b8ad08ce24 (このIDを非表示/違反報告)
てかみそ - こめこめコメダさん» 辞めたら………いやなんもしないけどほら。私はさ。プリ小説やってるし?私の思いもこめさんに継いでもらうって決めてたし((((((((殴 (2022年12月22日 14時) (レス) id: ca294d51e0 (このIDを非表示/違反報告)
こめこめコメダ(プロフ) - てかみそさん» うぅ〜……私も最近占ツクしんどくなってきたし辞めちゃおっかな… (2022年12月21日 3時) (レス) id: 3c5b67e3ca (このIDを非表示/違反報告)
てかみそ - こめこめコメダさん» まじだよ (2022年12月20日 18時) (レス) id: ca294d51e0 (このIDを非表示/違反報告)
こめこめコメダ(プロフ) - てかみそさん» マジかよ…… (2022年12月20日 11時) (レス) id: b8ad08ce24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめこめコメダ | 作成日時:2022年11月5日 19時