56:宣言 ページ7
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体育館に着くと、桃井がいた。
Aは黒子に泣きつく彼女を見て、大方の状況を理解し、小さく笑った。
少し時間が経ち、ようやく本題といったところで携帯が鳴り、彼は外へ出た。
『……ごめん、オレからかけようと思ってはいたんだよ。ただ忙しいかなとも思って』
《いいや、そうだと思ったから僕からかけたんだ》
言い訳だな、と思いながらもそれを言うと、相手は分かっていたよと笑った。
こんなことは滅多にない。
赤司征十郎がただの日常会話で笑うなど、滅多にないのだ。
『征十郎、インターハイ優勝おめでとう』
《ああ》
やっぱりありがとうなんて言葉は出てこないか、とAは少しだけ悲しそうな顔をしながら空を見上げた。
どんよりとした雲が広がって、雨が降っていて、あの日と同じだ。
あの分岐点と、同じだ。
《また倒れたんだろう？ 聞いたよ》
『……あはは、はは』
《ごまかしたって無駄だよ。僕がお前のことを知らないわけがないだろう？》
『そうだね……ごめんね、ありがとう』
彼らは間違いなく双子である。
見た目だって、声だって、あるいは仕草だって似ている。
だが体の弱いAはいつも、征十郎に守られていた。
年は同じでも、兄らしく、弟らしく。
中学時代、Aの練習メニューを決めていたのは征十郎だった。
何でも全部、征十郎の方が知っていた。
Aの状態ですらも。
《自分の体を大切に、と何度言ったら分かるんだ。今は僕がそばにいてあげられないから、尚更だよ》
『分かってるよ。心配性だなぁ』
洛山の選手たちが今の征十郎を見たらどう思うのだろう。
だなんて関係ないことをぼんやり考えながら、Aは彼の優しい説教を聞いていた。
征十郎の優しさは、Aにだけ集中していた。
別に誰かにきつく当たっているわけではない。
ただ単に、弟にだけはとにかく優しかったのだ。
『ねえ、征十郎。冬はさ、会いに行くよ』
《それは、宣戦布告かい？》
『好きにとってもらって構わないよ』
Aは征十郎に勝利したことなど一度もない。
そもそも同じ土俵に立ったことすらなかった。
いつも後ろをついて歩くだけ。
だからこれは、初めての宣言だった。
『絶対に勝つから、お前たちに。覚悟しとけよ』
《……ふふ、戦う準備くらいはしておくよ》
負ける気なんてないんだろうな、と思う。
だけどそれはAも同じだから、またねと挨拶をして電話を切った。
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ちさ子(プロフ) - 明後日打ったんで誤字になってて恥ずかしいです〜！！こちらこそレスありがとうございます！ (2019年12月19日 9時) (
レス) id: 62cdfd78f2 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん、(プロフ) - ちさ子さん» あわわわコメントありがとうございます！！ありがたいお言葉で頑張れます！ (2019年12月18日 16時) (レス) id: 97d132fcbf (このIDを非表示/違反報告)
ちさ子(プロフ) - すごか面白くて、一気に読みました！！続き楽しみすぎて眠れないです笑笑 (2019年12月18日 3時) (レス) id: 62cdfd78f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽん、 | 作成日時：2019年6月1日 0時
