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「知るか、ボケ。自業自得のくせにピーピー泣くな」
「なっ!?…な、泣いてねぇよ!」
少しは同情してくれたっていいと思うんだけど、おい。
俺はそう思ったけど、そう言う期待をこいつに持つこと自体が間違いなわけであって。
Aは大きく舌打ちをした。
「チッ。あのクソ担任、クソめんどくさいクソ犬の面倒を押し付けてクソ野郎だな」
「クソクソ言うな!下品だぞ!」
「黙れ」
白い布で吊るされた左腕を俺に向けてAは不愉快そうに眉間にしわを寄せる。
「都合のいい思考をするちゃらんぽらんな脳みそ腐乱状態人間になんで私が自分の時間を削ってまで勉強を教えなきゃいけないんだ。私になんの得があるんだ?」
「と、得って…」
「人に優しくしろって大人は言う。優しくするのは良いことだけど、見返りを求めるのは悪いことだと言う。
だったら私は見返りを求めないし、人に優しくもしない」
あいつは俺に振り返った。黒い髪が宙をふわりと舞う。
俺は目を大きくする。
汚い暴言を吐いて常識人とは思えないようなことを言ってんのに、強い光を帯びる青い目がそこにあったから。
「________勘違いするなよ、チューリップ」
いつもは冷たいはずの目が、熱くて強い目になってたことに俺はびっくりしたんだ。
「私はイヤイヤでお前のテスト勉強を手伝ってやってる。それを絶対忘れるな」
「…は、はい…」
怒りながらも頼もしいことを言うAに俺はなんだか不思議な感覚を覚えていた。
上から言われて腹立つし、理不尽な言い方はやっぱり言い返したくもなる。
でも、なんでかAのことを恨めない。
友達だからって意識してるからなのか?
まだチューしたいって思ってるからか?
よくわからないけど…今目の前で俺に嫌悪感をバリバリ示してくるAを俺は嫌いになることなんてなかった。
「お、お願いしますっ」
バッと俺はあいつに向かって頭を下げた。
いや、でもマジでこいつに頼るしかねぇんだよ。
俺は留年もかかってるし、サメちゃんたちに心配をかけたくない。
正直に俺はあいつに頼んだ。
「…べ、べんきょーを俺に教えてください」
「…」
Aは黙った。頭下げてるから表情はわからない。
でも少しダルそうな顔で言った。
「…まずは授業はちゃんと起きて聞け。授業は最初のテスト勉強だから」
「え!う、うん!」
俺は顔を上げてあいつを見上げた。
鬱陶しそうな顔をしてたあいつもため息を漏らすと身を翻して廊下を歩き出した。
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神野拓丸(プロフ) - 更新頑張ってください! (2018年5月12日 14時) (レス) id: 044a8ccaf1 (このIDを非表示/違反報告)
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