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「途切れ途切れでよく聞こえなかったけど『事件……お願い……ですが』って言葉が電話越しに聞こえてきたんだよ」
聞こえたと思ったら急いで電話を切られちまったけどな。
コナンがため息をつくと灰原は訝しげな表情を浮かべた。
「ただ単に何らかの事件にでも巻き込まれていたんじゃないの?」
「だったらなんで、」
どすん、と何やら重い物が地面に置かれる音に二人は反射的にその音の方に視線を向けると、そこには微かに白衣を汚した阿傘博士と段ボール箱が床に置かれていた。
「何ですか、それ?」
子供たちは興味津々に段ボール箱を見つめる中、光彦が博士に尋ねた。
「倉庫を整理していたんじゃが、そこに八年前の新聞を見つけてのぉ。君たちが好きな仮面ヤイバー特集が載っていたから、まとめて持ってきたんじゃよ」
博士の言葉に成る程と皆が納得したところで灰原は箱の中を覗き込む。
「意外と埃は被っていないわね。物影にでも隠れてたのかしら」
「八年前、つーことは俺が九歳のときに発行された新聞か」
懐かしいなあ、と新聞を手に取るコナン。
「議員解散、高校生科学者殺人事件、都内大規模停電、放火魔、マカデミー賞授与式___何時になっても事件事故はなくならないものね、まったく」
見出しに目を通した灰原は、ふっと吐息をつく。
「おいコナンと灰原、八年前は俺たちまだ生まれてねーぞ」
元太からごもっともなツッコミを食らった二人は、あ、と声を漏らすと顔を見合わせた。
「あ、あぁ、そうだった! 悪りぃ、少し勘違いしてた」
「そ、そうね。私もすっかり江戸川君のペースに乗せられて勘違いをしていたわ」
慌てて弁解し始める二人。
灰原に至ってはコナンの言葉に便乗しちゃっかりコナンに罪を擦り付けているが、本人は全くそれに気がついていない様子。相変わらず下手な弁解を続けていた。
一方弁解の様子を傍観していた博士は何かを思い出したのか一瞬目を見開くと「そういえば」と二人の話の間に割り込んだ。
「この間、わしは料理に塩を入れたつもりが砂糖を入れてしまってのぉ。結局、気付いたときには既に遅し……甘い料理が完成してしまったんじゃよ。勘違いは案外侮れないもんだと痛感したわい」
「それ俺の母ちゃんもたまにあるぞ! すっげー不味い料理になったんだっけな」
「健康にもよくないですし、気をつけないといけませんね!」
共感の言葉を次々に口にする子供たち。この様子を見るにコナンと灰原は自分たちの件についてはすっかり忘れていると判断し、ほっと胸を撫で下ろした。
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ゆあ(プロフ) - 雪夜さん» 面白いと言っていただけて嬉しいです! 夢主の正体は明かされるまで時間がかかりそうです……(ただ単に私の執筆スピードが遅いだけの話である) (2016年8月24日 21時) (レス) id: 8301c7292f (このIDを非表示/違反報告)
雪夜(プロフ) - 小説読ませて頂きました。 不思議ちゃんタイプかつミステリアス系女性…いいですね!最近コナンにハマってるのでこういう面白い感じの読みたかったんですよね!お喋り会の会話も面白いwww (2016年8月23日 20時) (レス) id: 9f458a58ad (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 南湖さん» コメントありがとうございます! そうなんです、FBIの方いらっしゃいますよ。私の方も早く登場させたいと思っているところでございます(笑)。 (2016年8月11日 23時) (レス) id: 8301c7292f (このIDを非表示/違反報告)
南湖(プロフ) - ご存知ではありませんでした。夢主の知識量凄い……ところでそこにはFBIもいるんだけれど? (2016年8月11日 20時) (レス) id: 1cca674757 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - *.・赤井 揺芽・.*さん» コメントありがとうございます!三人称は初挑戦になるのに付け加え苦手でもあるのですが、まさかそれについてお褒めのコメントを頂けるとは……!まだまだ経験不足の未熟者ですが、暖かい目で見守っていただけると幸いです (2016年8月9日 0時) (レス) id: 8301c7292f (このIDを非表示/違反報告)
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